洋上風力撤退 相次ぐ再公募要請/経産省ら | 建設通信新聞Digital

9月26日 金曜日

行政

洋上風力撤退 相次ぐ再公募要請/経産省ら

武藤経産相に要望書を手渡す鈴木知事
武藤経産相に要望書を手渡す熊谷知事
【熊谷千葉県知事「事業完遂できる制度に」/鈴木秋田県知事「発電事業者には配慮を」】
 国から事業者に選ばれた三菱商事が日本の洋上風力発電の第1ラウンドである秋田・千葉両県沖の3海域での洋上風力発電事業から撤退したことを受け、両県による経済産業省への要望が相次いでいる。18日には熊谷俊人千葉県知事、翌19日には鈴木健太秋田県知事がそれぞれ武藤容治経産相に要望書を手渡した。いずれも同海域で洋上風力発電の事業者を早期に再公募することなどを求めている。
 熊谷知事は千葉県銚子市沖の事業を通じて、「日本のカーボンニュートラルや地域の活性化にも資する思いで洋上風力発電事業に取り組んできた」と切り出した上で、三菱商事の撤退を「遺憾だ」と改めて強調。「二度とこうした撤退が起きないためにも、事業がしっかりと完遂できる制度に見直してほしい」と求めるとともに、早期の「再公募」を要請した。
 これに加えて、事業者側が地域活性化のために各種提案を行ってきたことを振り返り、撤退したとしても事業者の「責任」で取り組みを継続するように働き掛けてもらうよう国に直談判。この2点を要望書にも明記し、対応を求めた。
 能代市・三種町・男鹿市沖と由利本庄市沖で事業が計画されていた秋田県の鈴木知事も、速やかな再公募と地元関係者への支援とともに、ラウンド2、3の事業を含め洋上風力発電事業が国策として着実に実施されるよう、長期脱炭素電源オークションへの入札容認など事業環境を整備するよう訴えた。「発電事業者を取り巻く環境は厳しい。連鎖的に撤退が起きないようさまざまな面で配慮をお願いする。国策としてやりきる覚悟を持って進めてほしい」と求めた。
 これらの要望を受けて、武藤経産相は「地元の期待を裏切るもの」と三菱商事の撤退を非難し、「最初の案件が振り出しに戻ってしまうことは大変遺憾」と述べた。ただ、撤退しても、エネルギー政策上の洋上風力の位置付けに「全く変わりはない」と述べるとともに、年内をめどに公募制度を見直し「速やかに再公募をしたい」と応えた。地域活性化や事業環境の改善に向けた取り組みも引き続き推進する考えを示した。