クローズアップ・「協力雇用主」建設業で増加/法務省 | 建設通信新聞Digital

10月9日 木曜日

行政

クローズアップ・「協力雇用主」建設業で増加/法務省

協力雇用主に雇用され建設現場で働く様子 (法務省HPより)
【登録は業種トップの57%/人材確保が“立ち直り”に貢献】
 生産年齢人口の減少に伴い、働き手となる人材の確保が大きな課題となる中で、その対策の思惑もあって、企業が選択肢の一つとして活用を考える仕組みがある。法務省が元受刑者の就労支援などを目的に推進する「協力雇用主」だ。その登録社数は依然、建設業が全業種の過半数以上を占めており、その割合は年々増加。今や57%に達する。担い手確保と同時に、雇用を通じて元受刑者の立ち直りや社会復帰の支援という社会貢献にも一役買っている。 協力雇用主とは、定職に就くことが容易でない刑務所出所者などの事情を理解した上で、犯罪や非行をした人の立ち直りに協力する目的で雇用、または雇用しようとする事業主のこと。再犯で刑務所に戻った人の7割が、再犯時に無職だったデータが示すように、協力雇用主は社会貢献だけでなく、再犯防止の側面からも大きな役割を果たしている。
 個人・法人を合わせた協力雇用主の登録社数を10月1日時点で比べると、2019年の2万2472社(前年同月比8.5%増)から20年は2万4213社(3.8%増)に増え、21年が2万4665社(1.9%増)、22年が2万5202社(2.2%増)と新型コロナウイルスの影響があった中でも漸増してきた。ただ、23年は2万4969社(0.9%減)の微減に転じた。
 このうち、建設業の占める割合は過半数を超えている。19年52.7%、20年54.4%、21年55.5%、22年56.3%と年々上昇。23年は57.0%まで高まり、2番目を占めるサービス業の15.8%を大きく上回る。
 建設業もサービス業と同様、人手不足の課題を抱えているが、建設業は資格が必要な仕事も多い。その点、受刑者が希望する場合、資格や技能が得られる職業訓練を刑期中に受けられるため、出所後に即戦力として期待できる点が登録社数の多さにも関係がありそうだ。職業訓練では建築や土木、建設機械をはじめ、配管、測量、建設く体工事、電気通信設備、内装施工など多くのコースを用意している。
 また、公共事業では協力雇用主として刑務所出所者などを雇用した実績などを評価する制度を整備。23年12月末現在、全国の都道府県と市区町村のうち、入札参加資格の審査で評価している地方自治体は198団体、総合評価方式で評価しているのは79団体となっている。
 では、協力雇用主に登録し、実際に雇用している事業主の思いはどうなのだろう。
 法務省担当者によると、「雇用した刑務所出所者などが仕事を続けられるよう、小まめに声掛けをしたり、仕事や私生活のアドバイスをしたり、本人に寄り添った対応をしてくれている。その結果、再犯せずに真面目に仕事を続け、会社にも貢献できるようになり、本人、協力雇用主の双方にとってもプラスの結果が生まれている例もある。『人手不足の解消と、地域社会が明るく安全・安心に暮らせるための活動を続けたい』との声も聞いている」という。
 とはいえ、元受刑者を雇用して大丈夫なのかと不安を抱く企業も存在するはずだ。そこで法務省は各種支援制度を設けた。試行的に雇用する際、最長3カ月間にわたり月額4万円を支給するトライアル雇用制度(最大12万円)、職場体験講習には最大2万4000円を支援する。さらに、実際に雇用した協力雇用主に対する就労・職場定着奨励金(最大48万円)、就労継続奨励金(最大24万円)も用意。これ以外に、損害を被った場合の身元保証制度(最大200万円)も設けている。
 法務省は、こうした支援メニューなども広く知ってもらって活用してもらうことで、協力雇用主の登録数だけでなく、雇用数の拡大にもつなげ、元受刑者の再犯防止と社会復帰を促進したい考えだ。