新社長・DNホールディングス 原田政彦氏 | 建設通信新聞Digital

10月4日 土曜日

インタビュー

新社長・DNホールディングス 原田政彦氏

【領域拡大へ民間市場注目】
 DNホールディングスの新社長に26日付で原田政彦氏が就任した。公共事業予算が横ばいとなる中、「事業領域の拡大」に向け、新たな成長のエンジンを模索している。注目するのは民間市場だ。「公共分野に並ぶ柱に育て上げたい」と長期的な目標を語る。その足掛かりをどのようにつくっていくのか、今後の成長戦略などを原田社長に聞いた。--経営方針について
 「2023年の大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントの経営統合によるシナジーもあり、売り上げは順調に伸びている。一方で、営業利益の改善は道半ばだ。統合前に両社がそれぞれ設置していた地方拠点の整理が進んで効率化の兆しが見えてきた。コストシナジーを発揮していくことが重要だ」
--注力することは
 「事業ポートフォリオの多様化に取り組みたい。現在は売り上げの8割を公共事業に依存している。この構造の改善が長期的な課題だ。2割程度にとどまる民間比率を、将来的には5割まで引き上げたい。そのためには、民間・海外市場への展開が不可欠だ。一朝一夕には進まず、確かな足掛かりを築く必要がある」
 「統合時からの重点テーマである災害対応力も引き続き強化していく。『令和6年能登半島地震』や、その後の奥能登豪雨では、地質調査企業と建設コンサルタント企業の統合によるシナジーが発揮できた。今後も自然災害の復旧・復興に積極的に貢献し対応力を高めていく」
--民間市場への展開について
 「旧ダイヤコンサルタントが長年にわたって電力会社から地質調査業務を受託し、実績を重ねてきた。これまでは調査が中心だったが、今後はさらに踏み込んで発電所関連の設計といった領域まで業務を広げていきたい」
 「製造業の大手企業の工場などでは、広大な敷地内に橋梁や護岸などのインフラ施設が備わっており、当社が携わる案件もある。近年のゲリラ豪雨などを念頭に、復旧対応や維持管理に対するニーズを取り込みたい。公共事業で培った知見はそのまま民間施設にも生かせるはずだ」
 「再生可能エネルギー分野への進出も強化している。陸上風力発電の分野で、アクセス道路の整備や風車設置箇所の整地、基礎の設計といった土木分野の需要を積極的に取り込んでいく」
--人材・組織について
 「残業時間の削減はもちろん、勤務地や職域、就業時間を選べる制度を導入して、柔軟な働き方の選択肢を広げている。同時に、限られた時間の中で社員にスキルを高めてもらうため、教育・研修の仕組みも充実させていきたい」
 「昨年、DX戦略推進部を社長直下に設置した。AI(人工知能)の業務への活用や、AIを利用したツールの開発ができる人材を社内で育てたい。外部講師を招いて教育体制も整備したほか、各支社や分野別で希望者を募り、勉強会などを通してAI活用の社内浸透も進めている」
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 (はらだ・まさひこ)1985年3月金沢大工学部土木工学科卒後、同年4月大日本コンサルタント(現大日本ダイヤコンサルタント)入社。大阪支社長、常務執行役員経営統括部統括部長、取締役兼専務執行役員経営企画本部長などを経て、2023年7月から大日本ダイヤコンサルタント社長。DNホールディングスでは24年9月の取締役兼副社長執行役員を経て25年9月から現職。富山県出身。62年7月22日生まれ、63歳。

◆記者の目
 橋梁設計技術者として新しい工法・技術を数多く提案してきた。一つひとつの既知の技術を組み合わせ、課題解決に取り組む。その積み重ねが「新たな価値の創出につながる」とし、そのためにも「自分にしかできない成果を追求することが大切だ」と説く。その姿勢は経営者になっても変わらない。「自分が社長に就いたからこそ実現したといえる結果を残したい」と気負いなく話す。