標準労務費を勧告/健全な競争環境に転換/中建審 | 建設通信新聞Digital

12月4日 木曜日

行政

標準労務費を勧告/健全な競争環境に転換/中建審

 中央建設業審議会は2日の総会で労務費の基準(標準労務費)の案を了承し、実施を勧告した。改正建設業法の12日からの全面施行により、標準労務費を基準とした著しく低い労務費による見積もりや契約を禁じる。労務費を削るダンピング(過度な安値受注)競争をなくし、各社の技術に基づく健全な競争環境に転換させる。 国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は「建設業は担い手の長期的な減少、主要資材の高止まりといった危機に直面している。ただ見方を変えれば、これまでの取引慣行を根本から改め、賃上げ環境の整備や価格転嫁対策の徹底を実現する絶好の機会だ」と述べ、持続可能な建設業を実現させる施策として標準労務費の重要性を強調した=写真。
 中建審のワーキンググループで10月までに計11回の会合を重ねてまとめた標準労務費の案を審議、了承した。技能者の経験・技能に応じて適正な賃金が支払われるようにするため、公共・民間工事を問わず全ての取引段階の請負契約で適正な労務費が確保されることを目指す。
 職種ごとの標準的な作業を前提に、「公共工事設計労務単価×適正歩掛かり」で算出した単位施工量当たりの労務費を基準値として定める。基準値に数量を乗じて導かれる額が適正な労務費となる。
 適正な労務費を確保するため、契約段階と支払い段階で実効性確保策を講じる。契約段階では専門工事業向けの手引などを通じて、労務費や材料費、法定福利費(事業主負担分)、安全衛生経費、建設業退職金共済(建退共)掛け金を内訳明示した見積書の作成を促す。
 支払い段階では契約当事者によるコミットメント制度を通じた適正支払いの担保、処遇に関する技能者向けの通報システムなどにより、建設キャリアアップシステムレベル別年収に相当する賃金の行き渡りを図る。
 日本建設業連合会の宮本洋一会長は「今後は実効性が問われる。そう簡単に様相は変わらないが、何としても取り組みを進めたい」と述べ、中建審の場で取り組み状況をフォローアップする必要があると主張した。
 全国建設業協会の今井雅則会長は「小ロット工事で直轄の歩掛かりを用いることが多く労務費が低く算定されている」と問題提起し、小ロット工事に対応する歩掛かりの整備を求めた。
 全国中小建設業協会の土志田領司理事は「下流から上流へと価格が決まる構造は今までの商習慣を大きく変える。労務費の行き渡りは持続可能な建設業を営むきっかけとなる」と期待を寄せた。
 建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は「(競争を)価格から質へどう変えていくか。継続して問題点をチェックしていくことで実効性あるものになる」と強調した。