【当たり前の商習慣に/「払うためにもらう」姿勢を】
「ここからがスタートであり、当たり前の商習慣として定着するように取り組んでいく」。国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は、改正建設業法の全面施行で運用が始まった労務費の基準(標準労務費)の浸透に決意を示す。地域の担い手であり、守り手でもある建設業がその役割を果たし続けるため、標準労務費の運用を通じて技能者の処遇を改善し、担い手の確保につなげる道筋を描く。
「適正な賃金を支払うための原資の確保を大前提に、生産性や技術力での競争にしなければならない」。そのためにも「『もらえないから払えない』ではなく、『払うためにもらう』という姿勢があらゆる取引で当たり前になるように転換していきたい」と前を向く。
とりわけ、サプライチェーン全体で足並みをそろえる必要性を強調し、「安心して働いていける建設業にするとともに、発注者側にとっても建設業に安心して仕事を任せられる状態にしたい。関係者全体が協力し、それぞれにメリットがあるような取り組みにしていく」と力を込める。
今後は新たな商習慣を個々の現場まで広めていくフェーズに入る。建設業界からは特に発注者に対する周知を求められているといい、「そこはより意識をしてやっていきたい」と説明する。同時に、あまねく現場への浸透に向けて建設業界の主体的な取り組みも求める。
法令違反が疑われる事案を調べる建設Gメンの活動を強化し実効性を確保する。新たな取引ルールを通じた労務費・賃金の支払い状況などを「丁寧にフォローしていく」ことで実態を把握し、改善につなげていく方針を示す。
標準労務費の在り方を議論した中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)は特に実効性確保策に重きを置き、計11回の会合を重ねた。「建設業が持続しなければ発注者側も発注ができなくなり、社会全体の損失になるという共通認識があったからこそ、最後にはまとめることができた」と振り返る。
立場の異なる委員同士でストレートに意見を出し合い議論が白熱したことは重要な過程だったと捉えており、「率直に話をする場は今後も必要になる。良い契機としてこれからもその流れが続いていくといい」と展望する。
勧告文書では建設業界に対して「過度な重層下請け構造の解消に自律的に取り組むことを期待したい」という一文も盛り込まれた。建設業特有の繁閑の調整機能として産業の発展の中で一定の必然性をもって築かれた仕組みとも見なせるが、標準労務費の運用によって適正な労務費や賃金を末端まで行き渡らせなければならないように、産業全体の疲弊につながっている側面も無視できない。
この点については引き続き検討すべき課題に位置付けられた格好となる。「過度な重層下請けの解消についてはわれわれも問題意識を持って取り組んでいく。業界にも(勧告文書の)趣旨を踏まえて取り組んでほしい」と呼び掛ける。
第3次担い手3法の全面施行を迎えた12日、金子恭之国土交通相は会見で「必要な労務費をきちんともらい技能者にしっかり給与を払う企業が評価される新しい時代の建設業をつくり上げる」と意気込みを語った。
新しい時代の建設業--。それは低価格競争という旧来の悪弊と決別した建設業であり、人材を育てる会社が適正な評価を受ける建設業であり、他産業に劣らない処遇を確保できる建設業であり、入職したい業界として選ばれる建設業でもある。
標準労務費の運用を契機とし、危機を好機に変え、新しい時代をたぐり寄せられるか。覚悟を問われる段階は過ぎ去った。建設業を将来にわたって持続させるため、あらゆる関係者が責任ある行動を取らなければならない。(千葉大伸、谷戸雄紀)
「ここからがスタートであり、当たり前の商習慣として定着するように取り組んでいく」。国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は、改正建設業法の全面施行で運用が始まった労務費の基準(標準労務費)の浸透に決意を示す。地域の担い手であり、守り手でもある建設業がその役割を果たし続けるため、標準労務費の運用を通じて技能者の処遇を改善し、担い手の確保につなげる道筋を描く。
「適正な賃金を支払うための原資の確保を大前提に、生産性や技術力での競争にしなければならない」。そのためにも「『もらえないから払えない』ではなく、『払うためにもらう』という姿勢があらゆる取引で当たり前になるように転換していきたい」と前を向く。
とりわけ、サプライチェーン全体で足並みをそろえる必要性を強調し、「安心して働いていける建設業にするとともに、発注者側にとっても建設業に安心して仕事を任せられる状態にしたい。関係者全体が協力し、それぞれにメリットがあるような取り組みにしていく」と力を込める。
今後は新たな商習慣を個々の現場まで広めていくフェーズに入る。建設業界からは特に発注者に対する周知を求められているといい、「そこはより意識をしてやっていきたい」と説明する。同時に、あまねく現場への浸透に向けて建設業界の主体的な取り組みも求める。
法令違反が疑われる事案を調べる建設Gメンの活動を強化し実効性を確保する。新たな取引ルールを通じた労務費・賃金の支払い状況などを「丁寧にフォローしていく」ことで実態を把握し、改善につなげていく方針を示す。
標準労務費の在り方を議論した中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)は特に実効性確保策に重きを置き、計11回の会合を重ねた。「建設業が持続しなければ発注者側も発注ができなくなり、社会全体の損失になるという共通認識があったからこそ、最後にはまとめることができた」と振り返る。
立場の異なる委員同士でストレートに意見を出し合い議論が白熱したことは重要な過程だったと捉えており、「率直に話をする場は今後も必要になる。良い契機としてこれからもその流れが続いていくといい」と展望する。
勧告文書では建設業界に対して「過度な重層下請け構造の解消に自律的に取り組むことを期待したい」という一文も盛り込まれた。建設業特有の繁閑の調整機能として産業の発展の中で一定の必然性をもって築かれた仕組みとも見なせるが、標準労務費の運用によって適正な労務費や賃金を末端まで行き渡らせなければならないように、産業全体の疲弊につながっている側面も無視できない。
この点については引き続き検討すべき課題に位置付けられた格好となる。「過度な重層下請けの解消についてはわれわれも問題意識を持って取り組んでいく。業界にも(勧告文書の)趣旨を踏まえて取り組んでほしい」と呼び掛ける。
第3次担い手3法の全面施行を迎えた12日、金子恭之国土交通相は会見で「必要な労務費をきちんともらい技能者にしっかり給与を払う企業が評価される新しい時代の建設業をつくり上げる」と意気込みを語った。
新しい時代の建設業--。それは低価格競争という旧来の悪弊と決別した建設業であり、人材を育てる会社が適正な評価を受ける建設業であり、他産業に劣らない処遇を確保できる建設業であり、入職したい業界として選ばれる建設業でもある。
標準労務費の運用を契機とし、危機を好機に変え、新しい時代をたぐり寄せられるか。覚悟を問われる段階は過ぎ去った。建設業を将来にわたって持続させるため、あらゆる関係者が責任ある行動を取らなければならない。(千葉大伸、谷戸雄紀)











