【新たな商習慣の定着を/処遇改善へ求められる行動】
改正建設業法・入札契約適正化法の残る規定が12日に発効し、公共工事品質確保促進法を含む第3次担い手3法が全面施行する。核となるのは労務費の基準(標準労務費)に基づく新たなルールの運用だ。旧来の慣行を脱却し、技能者の処遇を改善しなければ、この業界に担い手はやってこない。新しい商習慣の定着に向け、あらゆる関係者の責任ある行動が求められる。 「他産業には例のない新たな取り組みであり、建設業関係者の強い危機感の裏返しによるチャレンジだ。発注者、受注者が気持ちを一つにしてサプライチェーン全体で継続して取り組むことが大変重要になる」。標準労務費の案を審議・了承した2日の中央建設業審議会総会で、国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は呼び掛けた。
強い危機感の正体は、建設業界が長く苦しんでいる担い手の不足にほかならない。賃金原資の労務費を削る安値受注が横行し、末端の技能者に賃金が行き渡らない。過酷な労働環境にもかかわらず、建設業従事者の賃金水準は全産業平均に追いつかない。入職者の減少という帰結は産業の存亡そのものを危うくさせている。
「持続可能な建設産業の構築」を旗印に成立した改正建設業法は、建設業者に対して技能者の処遇を改善する努力義務を課した。標準労務費の運用はその根幹だ。公共・民間を問わずあらゆる工事で労務費の相場観として機能させ、適正な労務費の確保を目指す。
建設業者や発注者は労務費を内訳明示した見積書を作成・尊重。価格決定の構図を逆転させ、サプライチェーンの下流から上流に積み上げる。受注者の裁量に委ねる請負契約の原則に踏み込み、全ての階層の取引で労務費を固定化し、技能者に賃金として支払われるようにする。新たな商習慣の定着により、各社の技術に根差した生産性の高さが利益として還元される競争環境をつくり上げる。
標準労務費の基本的な考え方や実効性確保策をまとめた勧告文書は、中建審のワーキンググループ(WG)で計11回の会合を重ねて案を練り上げた。学識者、発注者、元請け、下請けの代表者らが立場の違いによる利害の違いを乗り越え、「全ての主体が持続可能な建設業の実現のために取るべき施策について知恵を出し合う」認識を共有しながら内容を固めた。
「そう簡単に様相が変わることは難しいと思うが、何としても取り組みを進めていきたい」(宮本洋一日本建設業連合会会長)、「1年で変わるとは思っていない。われわれもしっかりとやっていきたい」(岩田正吾建設産業専門団体連合会会長)。同日の中建審総会では決意がにじむ言葉が並んだ。新たなルールを現場レベルまで浸透させることは容易ではないが、着実に歩を進めなければならない。
残された時間はそれほど多くない。建設経済研究所が3月に発表したレポートは、2020年に244万人だった技能者数が35年に191万人にまで減少する見通しを示す。「取引慣行を改める意味では最初で最後のチャンスではないか」。6月のWGで事務局の国交省が投げ掛けた言葉は、その危機感を端的に物語っている。
改正建設業法・入札契約適正化法の残る規定が12日に発効し、公共工事品質確保促進法を含む第3次担い手3法が全面施行する。核となるのは労務費の基準(標準労務費)に基づく新たなルールの運用だ。旧来の慣行を脱却し、技能者の処遇を改善しなければ、この業界に担い手はやってこない。新しい商習慣の定着に向け、あらゆる関係者の責任ある行動が求められる。 「他産業には例のない新たな取り組みであり、建設業関係者の強い危機感の裏返しによるチャレンジだ。発注者、受注者が気持ちを一つにしてサプライチェーン全体で継続して取り組むことが大変重要になる」。標準労務費の案を審議・了承した2日の中央建設業審議会総会で、国土交通省の楠田幹人不動産・建設経済局長は呼び掛けた。
強い危機感の正体は、建設業界が長く苦しんでいる担い手の不足にほかならない。賃金原資の労務費を削る安値受注が横行し、末端の技能者に賃金が行き渡らない。過酷な労働環境にもかかわらず、建設業従事者の賃金水準は全産業平均に追いつかない。入職者の減少という帰結は産業の存亡そのものを危うくさせている。
「持続可能な建設産業の構築」を旗印に成立した改正建設業法は、建設業者に対して技能者の処遇を改善する努力義務を課した。標準労務費の運用はその根幹だ。公共・民間を問わずあらゆる工事で労務費の相場観として機能させ、適正な労務費の確保を目指す。
建設業者や発注者は労務費を内訳明示した見積書を作成・尊重。価格決定の構図を逆転させ、サプライチェーンの下流から上流に積み上げる。受注者の裁量に委ねる請負契約の原則に踏み込み、全ての階層の取引で労務費を固定化し、技能者に賃金として支払われるようにする。新たな商習慣の定着により、各社の技術に根差した生産性の高さが利益として還元される競争環境をつくり上げる。
標準労務費の基本的な考え方や実効性確保策をまとめた勧告文書は、中建審のワーキンググループ(WG)で計11回の会合を重ねて案を練り上げた。学識者、発注者、元請け、下請けの代表者らが立場の違いによる利害の違いを乗り越え、「全ての主体が持続可能な建設業の実現のために取るべき施策について知恵を出し合う」認識を共有しながら内容を固めた。
「そう簡単に様相が変わることは難しいと思うが、何としても取り組みを進めていきたい」(宮本洋一日本建設業連合会会長)、「1年で変わるとは思っていない。われわれもしっかりとやっていきたい」(岩田正吾建設産業専門団体連合会会長)。同日の中建審総会では決意がにじむ言葉が並んだ。新たなルールを現場レベルまで浸透させることは容易ではないが、着実に歩を進めなければならない。
残された時間はそれほど多くない。建設経済研究所が3月に発表したレポートは、2020年に244万人だった技能者数が35年に191万人にまで減少する見通しを示す。「取引慣行を改める意味では最初で最後のチャンスではないか」。6月のWGで事務局の国交省が投げ掛けた言葉は、その危機感を端的に物語っている。











