標準労務費案を了承/処遇改善のスタートに/中建審WG | 建設通信新聞Digital

11月1日 土曜日

行政

標準労務費案を了承/処遇改善のスタートに/中建審WG

【12月初旬に勧告】
 改正建設業法の全面施行により12月から運用が始まる労務費の基準(標準労務費)の案がまとまった。27日に開かれた中央建設業審議会のワーキンググループで国土交通省が案を示し、大筋で了承を得た。同月初旬に予定する中建審総会で案を審議し、標準労務費として勧告する。楠田幹人不動産・建設経済局長は「技能者の処遇改善に向けた大きな一歩だが、終わりではなくスタートだ」と強調した=写真。  =関連2面 中建審の勧告対象は標準労務費の基本的考え方や実効性確保策をまとめた文書のみとなる。職種別の適正な労務費を示す具体的な数値は基準値として扱い、改正法施行予定日の同月12日までに国交省が公表する。
 案では適正な労務費について、「公共工事設計労務単価×適正歩掛かり」で算出した「単位施工量当たりの労務費」に「施工量」を乗じた値と定義。労務費などの内訳を明示した見積書の提出促進、契約当事者によるコミットメント制度の活用など、契約段階と支払い段階の実効性確保策を記載した。
 注文者に対しては労務費が確保された適正額での発注、受注者には「払うためにもらう」商慣行を確立する主体的な取り組みを要請。賃金原資を削る受注競争から、技術に基づく健全な競争環境への転換が必要と強調した。併せて、建設コストの上昇を抑えるため、生産性向上と過度な重層下請け構造の解消に建設業界が自ら取り組むことも求めた。
 会合で全国建設業協会元副会長の荒木雷太岡山県建設業協会会長は、担い手確保に向けて標準労務費の早期運用を求めた上で、「実効性ある基準として運用されるため、関連する制度の見直しや効果的な連携が行われるよう検討してほしい」と述べた。
 日本建設業連合会の白石一尚人材確保・育成部会長の代理で出席した相良天章賃金・社会保険加入推進専門部会長は、標準労務費の算出に設計労務単価を採用することについて、「労務費の基準の勧告後も技能者の処遇改善を念頭に、基準となる単価としてどのような単価がふさわしいか議論を深めてほしい」と提起した。
 土志田領司全国中小建設業協会理事は、標準労務費の運用と並行して入札制度の見直しを要望。「入札が予定価格に集中する制度とすることで末端の技能者までこの業界に魅力を感じてもらえるようになる」と話した。
 建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は、サプライチェーン全体を見据えてまとめた案の意義を強調し、「難題を乗り越えて一つの着地点に来た。われわれもしっかり周知するので、業界として取り組んでほしい」と呼び掛けた。
 会合を総括した楠田局長は「勧告後は発注者、建設業者、団体をはじめ、あらゆる関係者に内容を丁寧に周知したい。この基準が現場の個々の取引まで広く浸透し、技能者の処遇改善に確実につながるよう引き続き取り組む」と力を込めた。