【個別アプローチで機運醸成】
大阪府市が成長戦略の柱に据える新大阪駅周辺整備が、新たな局面を迎えている。地域全体をけん引する南口エリアでは、地権者によるまちづくり協議会が中心となって社会実験を実施するなど、『まちづくりビジョン』の作成に向けた具体的な活動を展開している。所管する大阪府市の都市計画局は、その活動の支援に加えて、他エリアの機運醸成を図るため、個別の地権者までターゲットを絞って開発を働き掛ける方針だ。また2026年には地域の機運醸成を図るシンポジウムの開催も計画している。 新大阪駅周辺地域は、1964年の新幹線駅設置以来、オフィス機能が集積する『副都心』として開発が進められていた。駅ビルには多くの商業・飲食店舗が軒を並べ、機能が充実している一方、駅周辺では線路や道路が地域を分断するなど、移動利便性の面で課題を抱えており、駅から周辺地域までの人の流れを生み出すことができていなかった。
【西の拠点を形成】
大阪府市らは22年6月に『新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域まちづくり方針22』を策定し、『世界有数の広域交通ターミナルのまちづくり』を目標に掲げた。同年10月には、国が新大阪駅周辺地域を『都市再生緊急整備地域』に指定。同年12月に府市がまとめた『大阪のまちづくりグランドデザイン』では、『世界で存在感を発揮する拠点エリア』の一つに位置付け、大阪・関西の中枢、スーパー・メガリージョンの西の拠点を形成する方針を示している。
また、25年1月には「大阪駅周辺整備まちづくりシンポジウム」を開き、機運の醸成を図ったほか、24年11月に鉄道運輸機構が北陸新幹線の新駅位置を「新大阪駅南側の駅前ロータリー付近の地下」とする案を示したのを受け、25年8月に「新大阪駅エリア交通結節機能強化検討会」を発足させ、JR西日本ら関係機関と協議を開始している。
横山英幸大阪市長は「このまちのポテンシャルは高い。梅田や難波と同様、新大阪も車中心の空間から、人中心のウオーカブルな街へと転換していく必要がある。行政としても、民間の皆さんのビジョン実現に向け、規制緩和や環境整備で最大限のバックアップをしていく」と意気込みを語っている。
駅周辺地域の南端に位置する南口エリアでは他エリアに先駆けて、20年4月ごろから地権者と野村不動産と連携して再開発事業の可能性検討を開始。『まちづくり研究会』の発足や各種ワークショップの開催、関西大学の参画による産学連携協議の開始を経て、24年3月に『新大阪駅南口エリアまちづくり協議会』が発足した。『グリーンウオーカブルシティ』をまちづくりのコンセプトに掲げて、まちづくりビジョンの作成に取り組んでいる。
今年11月には駅から南口エリアへの人の流れを生み出す魅力づくりを検証するため、社会実験「シンオーサカ・ミナミートフェス」を実施。キッチンカーなどが出店し、多くの人でにぎわった。同協議会の松田吉弘会長は「このエリアでは現状、にぎわいを生み出せていないが、素材はある。関西大学と連携し、大阪府市の助言も頂きながら、具体化に向けて検討を進めていきたい。地権者たちの熱量は高く、一枚岩になりつつある」と手応えを語る。
【勢い止めず具体化へ】
一方で、南口以外のエリアでは活動が活発ではない。駅北西部に阪急電鉄が所有する土地では、十三-新大阪連絡線の新駅や駅ビル建設が構想されているが、具体化に至っていない。日本郵政不動産保有の旧メルパルク大阪(大阪市淀川区宮原4)は淺沼組の施工で施設の解体が進んでいるが、跡地活用の進展はない。駅北東部にある大阪市営日ノ出住宅跡の余剰地についても方針は示されていない。
大阪市都市計画局拠点開発室広域拠点開発課の下村健太郎参事は「新大阪のまちづくりは、行政が主導するものではない。民間のやる気をどう引き出し、どう制度で支えるかだ。南口エリアがリーディングプロジェクトとしてけん引し始めた今、この勢いを止めずに具体化へ進めたい。これまで、地域全体に対して機運醸成に取り組んでいたが、今後は個別の地権者にターゲットを絞り、直接働き掛けることも考えている」と話す。
大阪府市が成長戦略の柱に据える新大阪駅周辺整備が、新たな局面を迎えている。地域全体をけん引する南口エリアでは、地権者によるまちづくり協議会が中心となって社会実験を実施するなど、『まちづくりビジョン』の作成に向けた具体的な活動を展開している。所管する大阪府市の都市計画局は、その活動の支援に加えて、他エリアの機運醸成を図るため、個別の地権者までターゲットを絞って開発を働き掛ける方針だ。また2026年には地域の機運醸成を図るシンポジウムの開催も計画している。 新大阪駅周辺地域は、1964年の新幹線駅設置以来、オフィス機能が集積する『副都心』として開発が進められていた。駅ビルには多くの商業・飲食店舗が軒を並べ、機能が充実している一方、駅周辺では線路や道路が地域を分断するなど、移動利便性の面で課題を抱えており、駅から周辺地域までの人の流れを生み出すことができていなかった。
【西の拠点を形成】
大阪府市らは22年6月に『新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域まちづくり方針22』を策定し、『世界有数の広域交通ターミナルのまちづくり』を目標に掲げた。同年10月には、国が新大阪駅周辺地域を『都市再生緊急整備地域』に指定。同年12月に府市がまとめた『大阪のまちづくりグランドデザイン』では、『世界で存在感を発揮する拠点エリア』の一つに位置付け、大阪・関西の中枢、スーパー・メガリージョンの西の拠点を形成する方針を示している。
また、25年1月には「大阪駅周辺整備まちづくりシンポジウム」を開き、機運の醸成を図ったほか、24年11月に鉄道運輸機構が北陸新幹線の新駅位置を「新大阪駅南側の駅前ロータリー付近の地下」とする案を示したのを受け、25年8月に「新大阪駅エリア交通結節機能強化検討会」を発足させ、JR西日本ら関係機関と協議を開始している。
横山英幸大阪市長は「このまちのポテンシャルは高い。梅田や難波と同様、新大阪も車中心の空間から、人中心のウオーカブルな街へと転換していく必要がある。行政としても、民間の皆さんのビジョン実現に向け、規制緩和や環境整備で最大限のバックアップをしていく」と意気込みを語っている。
駅周辺地域の南端に位置する南口エリアでは他エリアに先駆けて、20年4月ごろから地権者と野村不動産と連携して再開発事業の可能性検討を開始。『まちづくり研究会』の発足や各種ワークショップの開催、関西大学の参画による産学連携協議の開始を経て、24年3月に『新大阪駅南口エリアまちづくり協議会』が発足した。『グリーンウオーカブルシティ』をまちづくりのコンセプトに掲げて、まちづくりビジョンの作成に取り組んでいる。
今年11月には駅から南口エリアへの人の流れを生み出す魅力づくりを検証するため、社会実験「シンオーサカ・ミナミートフェス」を実施。キッチンカーなどが出店し、多くの人でにぎわった。同協議会の松田吉弘会長は「このエリアでは現状、にぎわいを生み出せていないが、素材はある。関西大学と連携し、大阪府市の助言も頂きながら、具体化に向けて検討を進めていきたい。地権者たちの熱量は高く、一枚岩になりつつある」と手応えを語る。
【勢い止めず具体化へ】
一方で、南口以外のエリアでは活動が活発ではない。駅北西部に阪急電鉄が所有する土地では、十三-新大阪連絡線の新駅や駅ビル建設が構想されているが、具体化に至っていない。日本郵政不動産保有の旧メルパルク大阪(大阪市淀川区宮原4)は淺沼組の施工で施設の解体が進んでいるが、跡地活用の進展はない。駅北東部にある大阪市営日ノ出住宅跡の余剰地についても方針は示されていない。
大阪市都市計画局拠点開発室広域拠点開発課の下村健太郎参事は「新大阪のまちづくりは、行政が主導するものではない。民間のやる気をどう引き出し、どう制度で支えるかだ。南口エリアがリーディングプロジェクトとしてけん引し始めた今、この勢いを止めずに具体化へ進めたい。これまで、地域全体に対して機運醸成に取り組んでいたが、今後は個別の地権者にターゲットを絞り、直接働き掛けることも考えている」と話す。











