1ヵ月の連続夏季休暇提言/酷暑対応と生産性向上目指す/日本型枠工事業協会 | 建設通信新聞Digital

10月1日 水曜日

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1ヵ月の連続夏季休暇提言/酷暑対応と生産性向上目指す/日本型枠工事業協会

提言策定の理由として、地域の住民の命を守る建設業が一緒に働く仲間の命も守れないようでは命を守る建設業にはなれないと訴える三野輪会長(左)と後町廣幸専務理事
【1年単位で労働時間調整】
 日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は26日、『1カ月の連続夏季休暇取得による生産性向上提言』を発表した。最高気温が35度を超える猛暑日が近年急増し、屋外作業を行う職人の熱中症リスクが高まっているほか、酷暑で生産性が5割程度まで低下しているため、その対応策をまとめた。生産性が上がる10月から5月までの9カ月間は隔週の週休2日にする一方、7月下旬から8月下旬までの1カ月間は連続して夏季休暇にする。年間で労働時間を柔軟に設定する「1年単位の変形労働時間制」採用によって労働法制をクリアする。今後、上部団体や元請け、発注者に説明し、理解と実現を求めていく。 提言では、屋外作業をメインにしている主要建設技能労働者(とび・土工、鉄筋工、型枠大工、鉄骨とび、橋梁工など)だけで、建設キャリアアップシステム登録(2024年2月時点)技能工数は25万7348人おり、気温が33度を超えると労働生産性が半減することを踏まえ、東京を含めた全国17都市の平均猛暑日数20日間に技能工人数と生産性5割減を乗じると、夏場の現場で延べ257万人余の労働力が失われているとし、「職人の命を守る」とともに建設生産システムの供給力が低下していることへの危機感を示している。
 提言実現の前提である、繁忙期と閑散期で労働時間や休日を柔軟に設定する「1年単位の変形労働時間制」は、製造業を中心に全国で年間40万件の変形労働時間制協定が提出されている。日本型枠が今回提言の前提とした1年単位で働き方の繁閑調整に着目したのは理論上、1カ月間の連続休暇に伴う工程を繁忙期の9カ月間の労働生産性で補うことが可能で、年間の生産量は減少しないと判断したからだ。
 また、年間休暇や労働時間の長さなどで他産業に劣る建設産業の現場で、1カ月の長期休暇という日本の産業では珍しい取り組みには、「産業イメージを高め、新規入職者増大につながる」(三野輪会長)との期待感がある。
 ただ、都市圏の専門工事業の職人は日給月払い、いわゆる日給月給が主流。そのため、就労日数が減れば賃金も減少する問題がこれまでも建設業の重層構造解決を阻む最大の壁といわれてきた。さらに請負である職人に対して専門工事業経営者の中には有給休暇を付与することに違和感を持つケースも多く、結果的に最低限の休日確保にとどまっていた。
 今回の提言が実現すれば、今年12月の改正建設業法完全施行に伴う「労務費の基準(標準労務費)」導入でも事実上、積み残された職人の“日給月給問題”についても、請負の良い部分を残しながら不安定な日給月給から成果報酬制(月給制)移行が加速するほか、これまで以上に有給休暇の付与が可能になるとした。
 提言の実現に当たっては、技能労働者の賃金制度改革が伴う可能性が高いため、一気に導入することは困難として、地域的・段階的導入の視野も必要とした。工期が1年未満の場合、労働調整や現場対応、避けられない夏季作業への特別手当創設なども盛り込んだ。
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1年単位の変形労働時間制
 1年間を平均して1週40時間となる範囲で労働時間に凸凹をつける。凸凹のルールは、(1)労働日数は年間280日まで(2)連続労働日数は原則6日まで(特に繁忙な場合は12日まで)(3)労働時間は1日10時間、1週52時間まで(4)労働時間が48時間を超える週は連続3回まで(5)対象期間を3カ月ごとに区分した各期間で労働時間が48日間を超える週は3回まで--の五つ。
◆提言のポイント
・酷暑、熱中症を避けるため7月下旬から8月下旬までの1カ月間夏季休暇取得を付与
・長期休暇を魅力と感じる新規入職者の増大に期待
・長期休暇導入に合わせ日給月給から月給の成果報酬へ移行
・専門工事業に新たな資金繰り支援策