総務省が「電気通信設備エンジニア室」設置/持続的人材確保へ発足/業界の実態把握から着手 | 建設通信新聞Digital

10月8日 水曜日

行政

総務省が「電気通信設備エンジニア室」設置/持続的人材確保へ発足/業界の実態把握から着手

●(木に久)浦課長(左)と柴田室長
 総務省は、情報通信インフラを支えるエンジニアの確保に向けて、1日付で総合通信基盤局電気通信技術システム課に新たな部署「電気通信設備エンジニア室」を設置した。●(木に久)浦維勝課長は「われわれの最大のミッションは、電気通信サービスの安定的供給にある。それを果たすため、この分野を支える通信設備工事などの人材を持続的に確保したい」と思いを語る。初代室長に就いた柴田輝之氏は、その実現に向けた施策を打ち立て実行するためにも、「まずは定性的、定量的な実態把握を行う」と述べ、業界を“見える化”するための調査から着手する考えを明かす。
 情報通信インフラエンジニアリング業界も他産業と同様、人材確保が年々、困難になり困っているとの声が高まっている。総務省の「ICTの経済分析に関する調査(2023年度)」からも、その実態は明白だ。業界の雇用者数は00年の12万3000人から、22年は2万6000人まで減り、この20年近くで約5分の1にまで減少している。
 一方、情報通信インフラ業界は、従来のような固定電話を設置するための設計、施工、維持管理だけでなく、NTTが固定電話の銅回線廃止を表明したことに伴い、今後、その対応工事の増加が予想される。
 技術革新に対応した設備工事などにも追われ、NTT関連だけでなく、それ以外のNCC(ニューコモンキャリア)を含めた5G(第5世代移動通信システム)などの通信キャリア事業への対応、AI(人工知能)の普及に伴うデータセンター需要への対応も顕在化している。
 さらには自然災害発生時、さまざまな情報を取得するために情報通信設備の早期応急復旧などに応えることも求められている。こうした平時と非常時に対応できる人材の確保が欠かせないと考え、同室の設置に踏み切った。業界や外部からの相談先を見えやすくし、人材確保などの政策の検討につなげていく。
 26年度予算の概算要求では、「情報通信エンジニアリング業界の持続可能性確保事業」として新たに1億円を要求。柴田室長は雇用減少の数字がマクロな数字とした上で、「どういう会社が現場でどのような作業をし、どのような工事があってどれぐらいの費用が支払われているのかなど、業界の実態を把握したい。そうした見える化を通じて、処遇の問題などがどこにあるのか明らかにするところから始めたい」意向を示す。
 ●(木に久)浦課長も「公共工事には設計労務単価の仕組みがあるが、通信事業はわれわれの発注ではないため、その仕組みがない。NTT系の団体もあるが、それ以外(NCC)で業界横断的な取り組みもしにくい状況がある」と述べ、この調査で定量的な実態把握や工事の需給ギャップの実態を知ることの重要性を説く。
 その調査結果を今後の議論や政策立案などに生かすとともに、今年6月、電子情報通信学会に「情報通信エンジニアリング部門」が新設されたことから、同学会、さらには国土交通省などとも連携し、「若い人が目指す業界づくりに力を入れていく」と●(木に久)浦課長は決意を語る。