CLT・2×4の混構造/十分な強度を確認/中高層木造建築普及へ/国交省 | 建設通信新聞Digital

12月25日 木曜日

行政

CLT・2×4の混構造/十分な強度を確認/中高層木造建築普及へ/国交省

 国土交通省は、2023年度から24年度にかけて中高層木造建築物の設計・施工方法の一般化に向けた研究を行い、4階以上を想定したCLT(直交集成板)工法とツーバイフォー(2×4)工法の混構造が構造的に十分な強度を持つことを確認した。木質と不燃部材との混構造でも耐火性能を検証し、2時間以上の準耐火性能があることを確かめた。
 国交省が取り組む施策「中高層木造建築物の普及を通じた炭素固定の促進」は、23年10月に内閣府から「研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)」の採択を受け、24年度末まで研究を進めた。
 同施策では、50年のカーボンニュートラル実現に向けて中規模建設会社による中高層木造建築物の建設を促進するため、生産・施工の低コスト化を検討するとともに一般的な設計・施工方法の確立に取り組んでいる。
 木造で4階建て以上の建築物を建設するには低層部に高強度の耐力壁が必要となる。そのため、CLT架構の上に2×4工法を配置したオール木造の構造方法でも強度を確保できることを確かめた。この方法については、林野庁の補助事業を活用し設計ガイドライン案を作成している最中で年度内に公表する予定だ。RC造の耐力壁をCLTに置き換えることによって、炭素固定や工期短縮などの効果が期待できる。
 また、中層大型木質混構造建築物の床工法は一般的な設計法や工法がなく、耐火被覆や遮音対策のコストが高いことが課題となっていることから、コスト削減につながるCLTとRC造の合成床構造を開発し、試験体を使って実験した。長期の変形性能を確認する実験は継続しており、実験成果を基に設計ガイドラインをまとめる予定だ。
 耐火性能に関しては、CLTやNLT(釘接合集成板)とRC造の混構造による合成床の試験体も製作し検証した。その結果、120分を超える準耐火性能があることが明確になったほか、木材表面積が多い空間では噴出火炎が大きく、可燃物量が火炎継続時間に影響することが分かった。
 低コスト化に向けた分析では、中高層木造建築物を新規調達する場合、3階建てまではRC造やS造と比べ木造が安価となることや、維持管理は官庁営繕部の指針に従って行えばRC造やS造とほぼ同等のコストとなることを確認した。
 資材製造時から施工までに排出されるアップフロントカーボンについても調査した。座屈拘束ブレースや集成材面材構造は床面積当たりのCO2排出量が少なかった。
 同施策では、今後も低コスト化に関する基礎資料の収集や一般化に向けた工法の検証などを継続する方針だ。将来的には、省庁・業界団体向けのガイドラインの策定や導入支援策の実施を視野に入れている。