ウオーターPPPの検討続々/26、27年度に入札・公募相次ぐ/JSは約50団体と協定 | 建設通信新聞Digital

12月28日 日曜日

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ウオーターPPPの検討続々/26、27年度に入札・公募相次ぐ/JSは約50団体と協定

 全国の地方自治体が続々とウオーターPPPの導入検討を始めている。自治体からの要請を受けて導入検討などを実施する日本下水道事業団(JS)は、2024、25年度で既に計約50団体と調査実施などの協定を結んだ。検討要請の件数はさらに多く、自ら検討調査を発注している自治体なども含めると「およそ300団体は検討を始めているのではないか」(新井智明JSソリューション推進部上席調査役兼PPP・広域化推進課長)という。調査などが順調に進めば、26、27年度には民間事業者選定の入札・公募が相次ぐ見通し。 =関連4面 ウオーターPPPを巡っては、国土交通省が23年度にガイドライン第1.0版、24年度に第2.0版を策定。従来のコンセッション(運営権付与)と異なり、原則10年の長期契約や性能発注、維持管理、修繕、更新を一体で民間事業者に委託し、公共施設等運営権設定や利用料金直接収受を不要とする「管理・更新一体マネジメント方式」(レベル3.5)も新設された。民間事業者が施設の更新・改築工事も実施する「更新実施型」と更新計画案やコンストラクションマネジメントを民間事業者が担う「更新支援型」の2種類がある。
 JSは、22年度から5年間の第6次中期経営計画で、「下水道イノベーター」として下水道事業の変革をけん引する方針を示し、多くの自治体が未経験のPPP/PFIの導入を支援している。自治体が実施する事前検討を除く、導入検討、入札・公募準備、入札・公募/契約締結・引き継ぎの業務受託を24年度から始め、同年度に約30団体、25年度に約20団体と協定を結んだ。協定締結団体では、JSが順次、導入可能性調査業務などの発注を進めている。
 導入可能性調査では、自治体の政策やビジョンを踏まえて、長期契約を考慮した業務パッケージを検討する。契約手続き準備段階では、契約の進め方や要求水準書の記載内容、事業者選定期間中に開示すべき情報を検討する。更新実施型の場合でも、大規模改築を対象範囲から除くケースや長寿命化対象施設を限定するケースが考えられる。契約手続き段階では、公告や提案書審査、受託者選定を担う。
 自治体が続々とウオーターPPPの導入を検討する背景には、総務省の定員管理調査で24年4月1日時点の下水道部門の公営企業職員数が19年比で1.1%減少するなど、深刻な職員不足がある。大規模な更新工事の発注・監理業務はJSに委託する前提で下水道部門に技術職員を配置していない自治体もあるという。加えて、管渠更新のための国庫補助が27年度以降、ウオーターPPPの導入が条件となる点も導入を急ぐ要因となっている。
 ただ、性能発注の経験がない自治体が多いため、まずは一つの処理区だけを対象に検討を始めるケースが多くなっている。更新工事などは従来どおりJSに委託して更新支援型を選択する場合でも、「民間事業者が提案した更新計画案の妥当性を自治体が評価できるだろうか、という懸念の声もある」(新井上席調査役)という。
 さらに、民間事業者による維持管理が始まると、性能要件の履行状況を確認する「履行監視」を自治体が行わなければならない。しかし、「定量評価が可能な項目は分かりやすいが、補修や修繕に至る過程を評価する必要がある業務など定量評価が難しい業務の監視は難しい」(同)と導入へのハードルは高い。
 このため、自治体の履行監視や事後評価などもJSが支援する方針のほか、日本下水道協会が履行監視のための第三者機関の設立を提言するなど、ウオーターPPP定着に向けた仕組みづくりの動きも出ている。
 新井上席調査役は「自治体にとって初めての取り組みなので、確実に実施できるところでまず導入し、様子をみながら拡大が進むのではないか」としており、今後の成功事例が普及拡大の鍵を握りそうだ。