「強い経済」へ事業量上乗せ/強靱化初年度は2兆円超/全建要望決定 | 建設通信新聞Digital

11月19日 水曜日

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「強い経済」へ事業量上乗せ/強靱化初年度は2兆円超/全建要望決定

 全国建設業協会(今井雅則会長)は18日、東京・大手町の経団連会館で全国会長会議を開いた。10月に全国9地区で開催した2025年度地域懇談会・ブロック会議で出た意見を集約した全建要望を決定。26年度が期初となる第1次国土強靱化実施中期計画の初年度は、少なくとも2兆円を上回る公共事業費を確保するよう求める。26年度当初予算の公共事業関係費については、長らく続く横ばい基調から脱却し、資機材価格の高騰や人件費の上昇によるコストアップ分を反映するのはもちろん、高市内閣が掲げる「危機管理投資・成長投資による強い経済」を実現するため、必要な事業量をさらに上乗せするよう働き掛ける。全建・47都道府県建設業協会の総意として政府・与党に要望活動を展開していく。 開会に当たり、今井会長は「今年のブロック会議では、昨年よりも明らかに厳しい声、切実な声が上がった。皆さんの声が国政の場や建設業行政に的確に反映され、地域建設業が魅力ある憧れの産業となるよう、引き続き全力を尽くしていく。各都道府県協会においても、それぞれの立場から関係各所に対して積極的に声を届けていただきたい」とあいさつした=写真。
 全建要望では、公共建設投資の横ばいが続き、実質投資額が減少している中で、物価高などによって倒産が増加するなど、地域建設業の経営環境は厳しさを増していると説明。建設業界に施工余力が乏しいとする一部の主張に対し、全くの誤解であり、むしろ実質事業量の減少に苦しんでいるのが実態だと反論した。
 その上で、地域建設業が社会的使命を果たしていくためには、健全で安定したサステナブルな経営を続ける必要があり、公共事業の実質事業量の増額確保と経営の見通しが立つ長期的な事業計画が不可欠と訴えた。
 国土強靱化予算や当初予算公共事業費の増額以外には、直近の実勢価格を適切に反映した予定価格の設定やスライド条項の簡素化と受注者負担の撤廃、民間発注者に対する価格変更協議の円滑実施の指導などを盛り込んだ。
 入札制度のデフレ構造を抜本的に改善し、労務費の行き渡りと適正な利潤を確保するため、予定価格の上限拘束の撤廃や積算価格への上乗せなど価格決定方法の見直しを提案した。低入札価格調査基準・最低制限価格の上限枠や一般管理費等算入率の引き上げも要請。小ロット工事の実態を反映した歩掛かりを国土交通省主導で策定し、自治体に普及させることも求めた。
 自治体の技術系職員不足にも言及し、受発注業務を含めた地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)を積極的に活用して老朽化が進むインフラを適切に維持管理するよう呼び掛けた。
 また、休日が増えても労働者の減収とならないよう、月給制前提の制度化などによる設計労務単価の抜本的な見直しや補正係数の引き上げを主張。酷暑や積雪など工事に適さない期間や時間帯が増加していることを踏まえ、事後申請を容認するなど、柔軟な働き方を可能とする変形労働時間制の見直しを提案した。時間外労働上限規制の導入から1年半以上が経過し、さまざまな課題が生じていることから、制度の再検証による労働法制自体の見直しも求めた。
 夏場の過酷な屋外作業の現場に鑑み、夏季歩掛かりの設定や熱中症対策の拡充、工期延長とそれに伴う増加経費の計上を要望した。
 このほか、建設業退職金共済制度への複数掛け金の導入や総合評価方式での賃上げ加点措置の廃止、民間発注者を含めた工事代金支払いの迅速化、建設市場整備推進事業費補助金の継続・拡充、外国人労働者に対する国主導の教育と転籍が大都市に集中しないようにする制度設計なども明記した。