2026年は、第3次担い手3法の全面施行で運用が始まった労務費の基準(標準労務費)を核とする新たな取引ルールの初年度となる。技能者の処遇改善に向けた商習慣をいかに現場レベルまで浸透させられるかが問われており、サプライチェーン全体での行動が不可欠だ。金子恭之国土交通相が将来像として明言する「技能者にしっかり給与を払う企業が評価される新しい時代の建設業」を構築するための歩みが幕を開ける。 法施行により公共、民間を問わず、あらゆる工事で労務費の相場観となる標準労務費を著しく下回る水準での見積もり・契約は禁止された。技能者の処遇改善と将来の担い手を確保するため、労務費を競争の原資とする旧来の慣行を脱却し、技術力や生産性を競う健全な環境を築かなければならない。
受発注者間、元下間、下下間と建設工事のあらゆる階層の取引で新たなルールを根付かせる必要がある。契約段階、支払い段階の実効性確保策の遂行とともに、業界全体でマインドを転換することも重要となる。
労務費の内訳を明示した見積書の作成慣行がない会社向けの支援ツールも整備されており、建設業者には標準労務費を価格交渉の武器として使いこなし「払うためにもらう」主体的な姿勢が期待される。
建設投資の大半を占める民間工事の発注者にとっても同様で、将来にわたり安定的に発注できる体制を維持するという認識に立ち、適正な労務費を支払うことが求められる。新たな商習慣を定着させるためにはサプライチェーン一丸で責任ある行動を取らなければならない。
担い手不足に対する危機感を出発点に請負契約のルールを整備した第3次担い手3法以降の建設業政策を探る議論も重要局面を迎える。国交省が昨年6月に設置した「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」が3月にも成果を取りまとめるためだ。
勉強会では担い手確保だけでなく、今日的な企業経営や建設業で働く人材の活用などを論点に据え、建設業特有の産業構造にも目を配りながら政策の方向性を検討中だ。これまでの会合では重層下請けや零細企業の多さを問題視する意見、技能者の月給制、直接雇用を巡る提案も出ている。
昨年末に開かれた第5回会合で楠田幹人不動産・建設経済局長は、建設業が労働市場で選ばれるための働き方などについて「第3次担い手3法では必ずしも十分に対応しきれていない検討課題」との認識を示し、政策検討の必要性を説いた。
3月以降は取りまとめをベースにさらに議論を深め、次の建設業政策の輪郭を描いていく。実際の政策にどのように結実するかは今後の検討次第だが、仮に制度的対応が必要となれば法改正で措置を講じる可能性も視野に入るだろう。
能登半島地震の発生から1日で2年となった。被災地の復旧・復興、そして来る災害に備えるため、建設業の力が不可欠であることは論をまたない。建設業が地域の守り手としての役割を果たし続け、産業として将来に持続するための取り組みが加速する。
