【収益力・企業価値の向上へ】
1日付で森組の新社長に就く内山浩二氏は、前任体制の下で整えてきた財務基盤を土台に、次の段階として「強い収益力を持つ会社」への進化を目指す考えだ。建設市場に追い風が吹く今こそ、逆風時にも失速しない事業体質を築く好機とみる。土木の安定力に加え、建築事業の収益力向上と人財の強化を進め、持続的な成長につなげる、その考えを聞いた。
--就任の抱負は
「当社は創業127年の歴史を持ち、私は9代目の社長となる。吉田裕司前社長の時代に長く課題だった財務体質の改善が進み、ようやく筋肉質な体幹ができてきた。これからはその基礎体力を土台に、結果を出す段階に入らなければならない。特に同業他社と比べた収益力、なかでも建築部門の力を高め、株主還元や社員の待遇改善につなげていきたい」
--経営方針は
「いま業界には追い風が吹いているが、それに乗っているだけでは逆風に変わった瞬間に失速する。だからこそ今、地力をつけておかねばならない。私が目指すのは、強い森組をつくることだ。当社のシンボルキャラクター『モーリー』はフクロウをモチーフとしており、知恵、鋭さ、広い視野という意味を込めている。この世界観を経営にも重ね、地域や顧客から『森組に頼めば何とかしてくれる』と思われる存在にしたい。収益基盤の強化と企業価値の向上、その両輪を回していく」
--建設市場をどう見ている
「土木は公共分野を中心に一定の需要が続くとみている。人口減少で新設工事は緩やかに減っても、自然災害の激甚化やインフラ老朽化への対応から、治水や維持補修、上下水道再構築などへの需要はむしろ高まるだろう。一方、建築は新設需要が減る可能性がある。ただ、日本では新しいものを求める志向が根強く、建て替えや再開発、リニューアル需要は今後も底堅い。市場全体がなくなるのではなく、中身が変わっていくという見方をしている」
--注力する営業ポイントは
「建築事業のポートフォリオを見直したい。現在はマンションの比率が7-8割を占めるが、競争が激しく、工期も長いため、市況変動や資材高騰の影響を受けやすい。今後はその比率を半分程度まで下げ、工場や商業施設、S造案件、公共建築などの比重を高めたい。特に工期の短いS造の案件は、資金回収のサイクルが早く、収益面でも有効だ。大型案件も魅力はあるが、無理に取りに行って会社全体の採算や資金繰りを崩しては意味がない。規模より中身、売り上げより利益を重視し、リスクを見極めながら受注を積み上げる」
--人財の確保・育成については
「人財は今後の成長の鍵であり、採用も育成も一段と強化しなければならない。建設業は人を増やさないと売り上げそのものを大きく伸ばしにくい産業であり、効率化と採用を両輪で進める必要がある。強い会社は、結局は強い人財の集まりである。会社としても、そうした人が育ち、集まる環境を整えていく」
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(うちやま・こうじ)1988年3月愛媛大学工学部海洋工学科卒後、同年4月森組入社。経営企画、理財、安全統括などに携わり、2022年6月代表取締役常務執行役員経営管理本部長兼経営企画部長、24年4月同常務執行役員経営管理本部長兼総務部長を歴任。三重県出身。60年12月6日生まれ、60歳。
【記者の目】
コロナ禍を機に始めたジョギングは「結構楽しい」と感じるようになり、今では生活の一部になっている。「道すがら季節の移ろいや景色を味わう時間も楽しんでいる」という。また、シンボルキャラクター『モーリー』には検討段階から関わっており、「このイメージや世界観、考え方を大事にし、実現できる会社にしていきたい。たくさんの方に愛され、技術力、知識を蓄えて、社会に貢献する『森の賢者』でありたい」と強調する。
