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代行スキーム拡大の原点に/道路復旧がもたらしたもの/熊本地震から10年

掲載日 | 2026/04/15 12面

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  北側復旧ルートの開通式典        (20年10月撮影)

 新阿蘇大橋 (21年3月撮影)

 2016年4月16日に発生した本震は、熊本市と阿蘇方面を結ぶ国道57号の斜面崩壊に加え、これと接続する国道325号阿蘇大橋の崩落、県道28号熊本高森線の俵山トンネルや橋梁群の損傷を引き起こし、1日当たり2万台を超える交通機能まひに陥った。被害は極めて大きく、復旧に高度な土木技術を要することから、地元自治体単独での早期復旧は事実上困難だった。
 熊本県の蒲島郁夫前知事は、被災直後に「阿蘇方面へのアクセス確保は地方創生に欠かせない」と強調し、南阿蘇村長と連名で直轄権限代行を国に要請し、交通インフラの早期復旧の実現に動いた。九州地方整備局は、非常態勢を敷き、各自治体にリエゾン(情報連絡員)を派遣し、被害情報の収集や自治体の要望の聞き取りを行った。併せてTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)が国道・県道の被災状況を調査し、道路啓開を行った。
 発災からわずか1カ月足らずの5月9日に国道325号阿蘇大橋の権限代行、同月13日に県道熊本高森線と村道栃の木~立野線の権限代行の事業化が決まった。こうした熊本地震での対応は、2020年7月豪雨や能登半島地震といった大規模災害の早期復旧のモデルとして生かされるだけでなく、各種法改正で国の権限代行のスキームが拡大するきっかけとなった。
 当時、熊本河川国道事務所長として陣頭指揮を執った森田康夫氏(前九州地方整備局長、現プレストレスト・コンクリート建設業協会参与)は、権限代行の決定を「最善だった」と振り返る。主要幹線道路の早期復旧が熊本地震からの復旧・復興の鍵になると考えたからだ。
 森田氏は、国土交通省本省や整備局の指示を仰ぎながら、東日本大震災で構築された各種制度を活用・改善して臨機応変に工事を発注した。その一つが災害時協力協定を結ぶ熊本県建設業協会への緊急要請だった。協会加盟企業が組成した地域JVに競争参加を求め、簡易な評価項目で特定し、随意契約を結ぶ迅速な手続きを取った。それが被災後8カ月での俵山トンネルルートの暫定復旧につながった。
 国道57号の迂回(うかい)路として二重峠トンネル(全長約13㎞)を含む自動車専用道路を整備した北側復旧ルートは、地震発生から4年半(ルート決定から約1500日)での完成・供用を実現し、蒲島前知事に「異例のスピード」と言わしめた。このとき、トンネル工事で、全国初となるECI(施工予定技術者事前協議)方式を採用できたのは、森田氏が国土技術政策総合研究所時代に同方式の国内導入に向けた海外調査やガイドライン作成に関わった経験が生きた結果だ。
 ECIの適用を決めた直後、この分野の第一人者である小澤一雅氏(当時、東大大学院教授)に電話をかけ、当該工事の技術提案・交渉方式に関する専門部会の委員就任を要請した。結果として、避難坑の大断面化を生かした複数切り羽での本坑掘削、高耐力ロックボルトの採用による打設本数の削減などの工夫により、施工期間を1年半以上短縮させた。
 新阿蘇大橋の建設では、元の位置から約600m下流に架け替えるルートに決定。大規模地震時には支承を破壊して落橋を防ぐ構造計画を採り入れた。急斜面での資機材運搬を可能にするインクライン工法など、険しい地形や強風という過酷な条件下で工期を短縮する新技術を導入した。21年3月の同橋開通をもって熊本と阿蘇方面を結ぶ主要ルートが回復し、阿蘇地域の観光振興や地域住民の生活再建だけでなく、創造的復興に大きな役割を果たした。

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