九州・沖縄8県3政令市のうち6団体で、熱中症・防寒対策費の積み上げ上限が国土交通省の最新基準に適合している。気候変動に伴う過酷な猛暑期間を迎える前に、建設現場の安全確保に向けた財政的な裏付けが急ピッチで整ってきている。
現場環境改善費は、直接工事費などに対して一定の割合を掛けて算出する「率分計上」を基本の枠組みとしてきた。近年は、現場を冷やす大型ミストファンや空調完備の休憩所といった設備の需要が急増し、既存の率分計上だけで対策費用を賄えず、受注者側の持ち出しになってしまう実態がある。これを受けて、各自治体は熱中症・防寒対策にかかる費用を率計上の枠から切り離し、実費ベースで請求できる「積み上げ計上」への移行を段階的に進めてきた。
国は、3月の積算基準の改定で直轄工事の熱中症・防寒対策費の積み上げ上限を「率計上額の50%」から「100%」に引き上げた。福岡県と長崎県、宮崎県、福岡市はいち早くこれに追随した。さらに、福岡市は、100%を上限としつつ、受発注者間の協議で上限を超えた実費計上を可能とする例外規定を設けた。福岡市がこのように対応する背景には、国と比べて小規模工事が多く、工事規模に対して熱中症対策などの費用負担が相対的に重くなるという事情がある。
一方、積み上げ上限が50%の自治体は「改定予定」または「改定を検討中」と回答した。ただ、自治体によって現場の労働環境への投資余力に「制度間格差」が生じているのが現状だ。熱中症リスクから作業員の生命を守るための設備投資は待ったなしの状況であり、実態に即した100%上限基準の適用がどこまで迅速に波及していくかが最大の焦点となる。
