【CN念頭に製品開発加速】
建築向け耐火被覆板「タイカライト」やプラント用保温断熱材「ダイパライト」などで知られる日本インシュレーションは、製造販売だけでなく現場での施工にも対応する一貫体制で存在感を発揮してきた。社長に就任した中野強氏は、これまで積み上げてきた信頼と実績に基づきながらもカーボンニュートラル(CN)社会への貢献を念頭に、自社の持続的成長に向け「新領域への挑戦」を強く意識する。
--抱負を
「当社は自社で開発したケイ酸カルシウムの一種であるゾノトライト素材を使った耐火・保温材のパイオニアとして、長年にわたり信頼と実績を積み上げてきた。一方で建築需要は多様化し、CNへの対応が急務となっている。従来のやり方や材料にこだわらない視点も求められている。CNに貢献できる新領域の開拓を目指していきたい」
--事業の現状は
「2026年3月期決算は増収増益を達成し、売上高は143億円、営業利益は16億円を確保できた。とりわけプラントをはじめとする施工部門が好調で、住宅向けの耐火被覆や物流施設の鉄骨耐火被覆の需要も拡大し、数字を押し上げた。ただ、27年3月期については売り上げ、利益ともに前期を下回るのではないかとみている。特にプラント関連のメンテナンス需要は今年度が『踊り場』の1年となるとみている」
「売り上げの割合は、プラント分野2に対し、建築分野が1。このうちプラント分野は工事による売り上げが7割以上を占めている。一方、建築分野は工事と製品販売がほぼ1対1といったところだ。いま注目している建築の領域が、全国各地で計画されているデータセンター(DC)だ。DCは膨大な熱を発生するため、排熱のための煙突が設置される。その煙突のライニング材に当社製品はうってつけだ。実際に引き合いも増えている。こうした需要は取り込んでいきたい」
--担い手の確保は
「パートや技能実習生を含めた当社従業員数は、単体で約400人。中途も含め積極的に採用を進めているが、人材はまだ必要だ。施工部門は好調ながら一方で人材の確保が非常に厳しくなっている。プラント事業では人材派遣会社を通じ、ミャンマー人の技能者を2人受け入れている。新卒採用にも力を入れていく。知名度向上の一助になればと教育機関とのコラボレーションも始めた。日本大学駿河台キャンパスで当社協賛の学食メニューを5月に期間限定で出した。26年度からは新入社員に対する奨学金の返還支援も始めている。こうした取り組みを若手の確保につなげていきたい」
--技術開発について
「昨年秋に岐阜県瑞穂市にある技術本部R&Dセンターの隣地に多目的耐火試験炉を備えた防耐火試験棟を新設し、試験の適用範囲を拡大した。多様な顧客ニーズに対応し、スピーディーな製品開発を目指したい。このほかにも『加水分解装置』や『油化還元装置』といった新規技術の開発にも取り組んでいる。技術と創意工夫で、CNに貢献できる新領域を開拓していきたい」
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(なかの・つよし)1987年3月東大工学部卒後、同年4月住友化学工業(現住友化学)入社。2020年2月に日本インシュレーション出向、24年10月常務兼執行役員管理本部本部長、25年10月専務兼執行役員を経て、4月から現職。趣味はスキーで、全日本スキー連盟(SAJ)検定1級の腕前。大阪府出身。63年12月22日生まれ、62歳。
【記者の目】
住友化学時代に台湾の子会社に3年間出向し化合物半導体の開発に従事した。台湾の文化や人に触れ、いつしか親近感を持つようになり「新しい環境に適応する」ことの大切さを学んだという。日本インシュレーションに移り「統制のとれた組織」に感心する一方で「もっと挑戦があって良い」とも感じた。「社員の創意工夫を促していきたい。伸びしろが大きな会社だからこそ、工夫次第でもっと大きく成長できる」と確信しており、今後の手腕が注目されるところだ。
