「業界では間違いなくこの先、淘汰(とうた)が進む。個人的には5年で大きく動くと思っている」と語るのは鉄筋工事・加工を手掛ける国井興業(埼玉県熊谷市)の井出進社長だ。同社は5月に同業である東和建工社(さいたま市、田中司津夫社長)の株式を取得し、M&A(企業の合併・買収)を完了させた。厳しい市況にある鉄筋業界だが、あえて今拡大路線を行くのはなぜか。そこには後継者不足や担い手の不足といった業界の構造的な課題があった。
井出社長は「鉄筋工事業を含め、専門工事業者が多すぎる」という認識を示す。「(発注者や元請けから)求められる品質や提出書類の水準は高まり、さらにBIMをはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応など、全ての会社ができるとは到底思えない。経営者や職人の高齢化と相まって、倒産数は増えていく」とみる。
しかし、この変革期を井出社長はチャンスだと捉える。「長年の信頼と実績を持つ企業が淘汰されてしまう前に当社グループに加わってもらい、それを成長につなげていく。率先してM&Aをすることで顧客の見方も変え、選ばれる企業になる」と力を込める。
東和建工社はこれまで労務中心だったが、材料仕入れに強い国井興業が有利な条件で提供する共同購買体制を構築することで、3年以内に現在の倍まで売上高を引き上げる計画だ。両社は共に大手ゼネコンを主要顧客としているが取引先の重複は少なく、互いの顧客基盤を共有することでさらなる受注量増加を見込む。
今回のM&A案件には同業である専門工事企業のほか、ファンドなど30社以上の買い手候補が名乗りを上げたという。その中で田中社長は国井興業の「若さと将来性」を選んだ。従業員の平均年齢が37歳と若く、高い給与水準や充実したオフィス環境、福利厚生など、建設業界の旧来のイメージを覆す体制を整えている同社に社員の雇用維持と処遇改善を託した。
井出社長は、東和建工社の現状の経営体制や従業員の雇用を維持するだけでなく、特定技能外国人の増員など人員強化も計画する。ベテランの外国人材を多く抱える同社の育成・管理ノウハウをグループ全体へ展開する考えだ。
今後の投資計画については、「初めてのM&Aだったが、うまくいけばもう1社、さらにもう1社と拡大していきたい」と意欲を示す。選別が進む業界の中で、“勝ち組”として選ばれる会社になるために次なる一手を見据える。
