熊谷組は、屋内天井クレーンのつり荷直下の状況を可視化して、作業者の立ち入りをリアルタイムに検知・警告する安全確保システムを開発した。電波が遮られてGNSS(衛星測位システム)の精度が期待できない屋内でも、レーザー距離計とAI(人工知能)を組み合わせて、高精度な安全監視を実現する。
クレーン作業でのつり荷落下は重篤な事故を招く恐れがあり、直下への立ち入り禁止は鉄則とされる。ただ、クレーンは作業者の頭上を移動するため視界に入りにくく、誤って立ち入るリスクがつきまとう。このため、危険エリアへの侵入を自動判定して警告を発報するシステムの導入が求められていた。
開発したシステムは、クレーンに接続した2台のレーザー距離計でつり荷の平面座標を把握し、インターネット回線と常時接続した広角カメラの映像からAIが現場スタッフをリアルタイムで検出する。二つのデータは独自の計算処理で一体化し、作業者とつり荷の位置関係が画面上の鳥瞰図にマッピングされる。つり荷の周囲に設定した「安全円」と呼ばれる立ち入り禁止エリアに作業者が立ち入ると、画面上で近接検知の警告を発報する仕組みだ。
実証実験は、同社技術研究所(茨城県つくば市)内の天井クレーンで実施した。2台の距離計から1秒間隔で安定して測距データを取得でき、鳥瞰図上へのつり荷位置や安全円の描画、警告表示機能を確認した。作業者の体の向きにかかわらず、平均約90%の検知率で作業者を認識した。
今後は、AIの学習用データを拡充して検出の信頼性を高めるほか、距離計を使わずにカメラ映像だけでつり荷の位置を特定する技術開発を進める。導入コストの削減や映像のタイムラグの最小化を図り、即応性の高い安全監視体制の構築を目指す。
