寝耳に水だ--。国税庁が進めている取引相場のない株式(非上場株式)の評価方式変更を巡る議論に対し、全国各地の中小建設業から驚きと困惑の声が上がっている。全国建設業協会(今井雅則会長)は、都内で18日開いた理事会で、2027年度税制改正要望を一部改定し、評価方式見直しの凍結を追加した。全建は8月上旬に、国土交通省幹部に要望書を直接提出しているが、その後に内容を変更するのは極めて異例で、それが事の重大さを物語っている。各省庁は、予算概算要求に併せて税制改正要望も既にまとめてしまっているが、まずは業界の危機感を関係省庁に伝えた上で、年末に決着する与党税制改正大綱に反映させられるか、政治サイドへの働き掛けが今後の鍵となりそうだ。
国税庁は、非上場株式の相続税評価について、現行の類似業種比準方式や純資産価額方式などの各評価方式の間で評価額に乖離(かいり)が生じ、異なる規模の会社間での公平性が確保されていないなどとする会計検査院の指摘や、株式評価を恣意(しい)的に操作する租税回避スキームの存在などを踏まえ、4月に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を設置。以降、月1回ペースで議論を重ねてきた。
国税庁は、8月20日の第5回会合で見直しの方向性を提示。これに合わせた一部マスコミの大々的な報道を発端に、多くの業界関係者もこの話題を知ることとなった。全建本部にも、各地方の建設業協会や幹部会社などから問い合わせが相次いだという。
新たなルールとして考えられている残余利益方式に変わった場合の試算によると、極めて小規模な零細企業などは相続税額が下がるケースがあるものの、地域の中核を成すような全建会員クラスの中小建設会社は、おしなべて税負担が増えることになるという。事態を重く見た全建は、経営委員会などで再考した結果、税制改正要望を緊急的に改定し、国交省にも再度要望を伝えることにした。
新方式に対しては、議論当初から日本商工会議所が反対意見を表明している。地域の中核的な中小企業の評価額が大幅に上昇する可能性が高く、日商の試算では、評価額が現行の2倍から5倍近くに達し、相続税負担が数千万円から数億円規模で増加する事例も確認されているという。
全建は、地域建設業の資産には、不測の災害対応に不可欠な資機材や、これらを常時保持するための不動産も含まれるほか、地域経済や雇用を維持するための安定的な収益も必須であると指摘。新方式が採用されれば、多くの中小建設業の事業承継が崩壊し、「地域の守り手」が存続不可能になることが強く懸念されると訴えている。
要望では、非上場株式の評価方式の改定に当たっては、現在検討されている残余利益方式への変更の凍結と、最良の方式に見直されるまでの現行方式の維持など、地域建設業の事業承継を阻害することがないよう配慮を求めた。
併せて、当初の税制改正要望にも盛り込んでいた事業承継を前提とした相続税・贈与税非課税措置の制定については、「猶予」を削除し、「免除」措置だけを求めることにした。
