クローズアップ・新たな知見獲得する「学外評価」/兵庫県大学連携住宅設計合同講評会 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

その他

クローズアップ・新たな知見獲得する「学外評価」/兵庫県大学連携住宅設計合同講評会

公開プレゼンの様子
特別審査員を務めた岸氏
最優秀賞に選ばれた森山さん
記念撮影
  兵庫県下で建築を学ぶ学科がある5大学(関西学院、武庫川女子、大手前、神戸芸術工科、神戸)による「兵庫県大学連携住宅設計合同講評会(協賛=建築資料研究社/日建学院)」の公開審査が3月17日、神戸市の兵庫県立美術館で開かれた。2、3年の学生を対象にする全国でも珍しい講評会で、発足当時から携わる関西学院大建築学部の八木康夫学部長は「学外の視点による評価は新たな知見の獲得につながる。また、他学校の学生との交流は、建築設計のスキルだけでなく社会性、人間性も養える」と意義を語る。【社会性、人間性も養う】
 3回目の開催となった今回は57作品の応募があり、森山恵太朗さん(神戸芸術工科大)の「日々の変化と過ごす家」が最優秀賞に選ばれた。部屋の用途を固定しない住宅の設計作品で、住む人によって空間が変化するプランとしている。森山さんは「学内でもこれまで高く評価されたことがなかったので、うれしい。他大学の先生に講評していただき、自分にない考え方を知ることができた。自分はコンセプトに入り込みやすいタイプで、多様な視点の意見は新鮮だった。これからも自分が志す建築を深化させ、学内でも評価を得ていきたい」と喜びを語った。
 このほか、特別審査員賞と2年生優秀賞は岡村梨央さん(神戸芸術工科大)の「流れる」を選出。3年生優秀賞には前川珠希さん(関西学院大)の「Nakazaki Public Bookshelf」、奨励賞には高岡日陽里さん(大手前大)の「スラブグラデーション-立体的重なりの暮らし-」と香西美咲さん(関西学院大)の「The Path of Wind」がそれぞれ選ばれた。
 審査員は、関西学院大の八木学部長、米田明教授、原哲也教授、飯田匡准教授、柳尚吾准教授、志柿敦啓講師、武庫川女子大の岩田章吾教授、山田由美准教授、大手前大の増岡亮准教授、神戸芸術工科大の畑友洋准教授、小坂田雄介講師、神戸大の末包伸吾教授が務めた。また、建築家の岸和郎氏が特別審査員として参加し、講評会終了後は特別講演会も開いた。
 この講評会は22年から始まった。初開催に先立ち、21年春に今回参加の大学に兵庫県立大を加えた6大学の教員による研究会を発足させ、実施概要を検討した。八木学部長は「まず『兵庫県から優秀な人材を輩出する』ことをビジョンに掲げた。その手段として、大学で行っている設計演習をオープンにして、他大学の先生に評価してもらう『他流試合』をやろうということになった」と振り返る。
 評価は、参加大学の教員とゲスト審査員により行う。参加できる学生は2年生と3年生で、各大学の課題で作成した住宅の設計が対象となる。「学内だけで評価していると、どうしても『たこつぼ化』に陥ってしまう。他大学の先生による評価は、学内での評価と目線や表現が違い、学生の視野拡大につながる」と効果を語る。
 運営は学生が主体となっており、教員はオブザーバーに徹している。「運営を学生に任せることで、イベントを自分事として捉え、より主体性を持って取り組むことになる。ノウハウが3年生から2年生に伝承され、縦のつながりもできる。他大学の学生との交流は社会的、人間的にも成長することにつながる」という。また「3年生、4年生とは違い、2年生は学外での発表の場、競技の場が少ない。講評会によって学生のモチベーションが高まることも期待している。教員サイドも他学校の教育方針に触れ、今後の参考にもなる」と、多くの目的を持つイベントになっている。
 今後は「より優秀な人材を養成するため、合同授業の実施などにつなげられれば」と夢を語る。また、実行委員長を務めた渡辺賢太郎さん(関西学院大)は「講評会がもっと学生に浸透して応募数が増え、伝統として受け継がれていくようになってほしい」と、後輩たちに思いを寄せている。