新社長インタビュー・日本郵政建築 倉田泰樹氏 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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新社長インタビュー・日本郵政建築 倉田泰樹氏

【機動的組織で快適な施設を】
 1日付で日本郵政が、日本郵政建築を設立した。郵政グループの保有施設の維持・修繕に関する支援、企画、設計などを担う。初代社長には倉田泰樹氏が就任した。前身となる日本郵政施設部では、全国に約2万4000局ある郵便局の施設とネットワークを支えてきた。培った経験とノウハウを、7月1日から開始する事業にどのように生かすのか、新たな組織体制も含めて話を聞いた。--就任の抱負は
 「これまで、日本郵政施設部として、郵便局をはじめとする郵政グループ施設の維持保全を中心に業務を展開してきた。今後も、施設を適切に維持管理し、お客さまに快適なサービスを提供するという役割は変わらない。社員にも役割をしっかり説明して環境の変化に伴う不安を払拭し、より力が発揮できる環境を整えたい」
--組織体制は
 「企業になったことで新たに必要になった経営をはじめ、施設部の頃から存在していた技術、業務上のさまざまな事項を取りまとめる窓口など、本部制を敷いて各機能を明確にしつつ、生産性と意思決定のスピードを高め、機動的に動ける組織をつくる」
 「ポイントになるのは権限の委譲だ。必要性や重要性に応じて、意思決定の権限を積極的に下ろしていける仕組みを考えたい。経営は初めての経験で、情報共有の面などに少し不安もあるが、恐れずに挑戦し、新会社としてのカルチャーを確立したい」
--新会社の業務展開は
 「重視するのは発注者支援だ。より良い、利用しやすい郵便局をつくろうという思いは、郵政省時代から受け継いできたわれわれのDNAといえる。郵便局の維持管理に伴い生じる修繕や改修に際しては、高い当事者意識で企画から設計、維持管理までを一体的に手掛ける」
 「初年度を除く年間の売り上げは、70億円程度を見込んでいるが、9割程度が郵政グループの業務となる。企業である以上は黒字を意識するが、現状で収益を大きく伸ばすことは考えていない」
 「設計のための建築士事務所登録は必要だが、新築設計は、2万を超える施設全体の計画的な維持保全の一環で、必要に応じて実施するものと位置付けている。われわれの強みは、設計というよりも、膨大な施設の維持保全を軸にした計画的な施設管理のノウハウだ。地方自治体などを中心にグループ外で生かす機会があれば、社会貢献的な観点で挑戦したい」
--人材確保・育成について
 「建築系の人材も重要だが、最も不足しているのは設備系技術者で、同時に、地域の郵便局に詳しい技術者をいかに確保するかが課題だ。解決のため、トライアルとして地域に根付いて働いてもらう地方型の採用枠を設けた。併せて、既存の技術者が現場経験を重ねて能力をより高めていくローテーションの仕組みも考えたい。ただ、最も重要なのは会社や郵便局、地域社会に対して愛着心を持ち仕事ができる環境だ。総合的なサポート体制を整え、社員のエンゲージメントを高めていく」

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 (くらた・やすき)1991年3月一橋大経済学部卒後、同年4月郵政省(現総務省)入省。2002年7月総務省郵政企画管理局保険経営計画課課長補佐、03年4月日本郵政公社簡易保険事業本部企画部グループリーダー、12年7月日本郵政コンプライアンス統括部次長などを経て、21年7月施設部長。奈良県出身。68年10月5日生まれ、55歳。
■記者の目
 組織を円滑に動かす上では「当たり前のことを当たり前と思わないことが大切」と話し、社内外の人と仕事に感謝の心で向き合うことを心掛ける。その姿勢は、環境の変化に不安を感じる社員を気に掛ける言葉からもうかがえる。一方、社員・組織には新たな環境での挑戦も促し、「初めは失敗ばかりかもしれないが、失敗を糧にして、組織としても人としても成長していこう」と未来志向で呼び掛ける。