担い手確保に迫る変化の波/「今の建設業」みせることが不可欠/DX化で理解得やすい環境に
高卒採用の現場で劇的な変化が起きている。全国高校の約6割で導入され、就職、進路指導におけるインフラとなりつつある支援システム「Handy進路指導室」が、そのエンジンとなっている。事業を展開するハンディ(東京都港区、太田靖宏CEO)の前澤隆一郎COOは、「建設業界は他業種に比べ1.5倍の採用努力が必要だが、データに基づいた戦略で勝機は見いだせる」と断言する。ここ数年でアナログな「紙」の求人票から、デジタルによる「データ活用」へと変化した、高卒採用の最前線に迫った。
ミスマッチを解消
現在、就職希望者のいる高校は全国で約3000校。そのうち約9割に当たる約2700校が導入しているのが、求人情報のデジタル管理システム「Handy進路指導室」だ。
同社がサービスの提供を開始した2021年ごろの高校の進路指導室は、数千枚に及ぶ紙の求人票であふれかえっていた。担当教員は放課後にこれらを1枚ずつ手入力でデータ化し、生徒は学校でしか情報を閲覧できないという、極めて非効率な環境にあった。前澤氏は「教員の過重労働を解消し、生徒がスマートフォンで自由に仕事を探せる環境をつくることが、この事業の原点」と語る。
このDX(デジタルトランスフォーメーション)化により、本来持ち出しのできなかった求人票を、生徒は自宅で親と一緒に検索することが可能になった。BtoB企業が多い建設業は、そもそも子どもからの認知度が低い。一方、社会経験豊富な親がフォローすることで理解を得やすい環境が整った。
建設業の“勝機”
ただ、課題も残る。ハンディが蓄積する膨大なデータは、建設業界の若手入職者確保が喫緊の課題となる中、業界の厳しい現実を浮き彫りにしている。同社の26年卒データの分析によると、事務職が「13回閲覧されると1回お気に入り登録(ブックマーク)される」のに対し、建設業はその1.5倍の閲覧数が必要だという。
「建設業は全業種の中で最も初任給が高く、都内なら25万円、中には40万円近い求人もある。しかし、生徒の人気は依然として『屋内の事務・接客』に集中している」と前澤氏は指摘する。
背景にあるのは、教員や生徒・保護者が抱く建設業へのイメージだ。いまだに多くが業界に対して3K(きつい、汚い、危険)という旧態依然としたバイアスがある。
ICT施工やクレーンの遠隔操作など、劇的に進化している現場の“リアル”が正しく伝わっていないのではないか。前澤氏は「動画や写真を活用し、視覚的に変わりつつある『今の建設業』を見せることが不可欠」と提言する。
前例踏襲から脱却
これまでの建設業の採用は、企業が地元の高校へ足しげく通う前例踏襲の“足で稼ぐ”手法が中心だった。
しかし、Handyの導入により、企業は「自社の求人票がどの高校で、何回見られているか」を具体的な数字で把握できるようになった。
「どの高校に注力すべきか、データというエビデンスに基づいた採用活動が可能になった。これは従来の『ブラックボックス』だった高卒採用における革命だ」と前澤氏は強調する。
また、生徒の検索行動を分析すると、「新着順」に次いで「地図検索」が多用されている事実も見過ごせない。多くの高校生にとって、最大の関心事は「自宅から通えるか」だ。建設現場は移動が伴うが、「朝どこに集合するのか」「直行直帰は可能か」といった見せ方を工夫するだけで、生徒の反応は劇的に変わる可能性を秘めているという。
「金の卵」射止める
高卒採用市場はいまや完全な「売り手市場」であり、高校生は「金の卵」以上の存在となっている。前澤氏は建設関連企業に向けて次のようにエールを送った。
「建設業界には活気があり、若者がスキルを身に付け、高年収を目指せる魅力がある。単にホームページを直して満足するのではなく、データを活用して、彼らが求める形で情報を届けてほしい。時代に合わせて自らを変えられる企業こそが、次世代の担い手を確保できるはずだ」



