【バンザイいろいろ】ダム式、下水道式、海岸式を徹底解説! | 建設通信新聞Digital

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【バンザイいろいろ】ダム式、下水道式、海岸式を徹底解説!

 土木関係者の間ではおなじみとなっている「ダム式万歳」。完成式典や懇親会の締めなどで、ダムになりきって空に向かって万歳三唱する。ダム式万歳をモチーフにした手ぬぐいが2年前に民間企業から発売され、反響を呼んだ。しかし、万歳はダム式だけではない。下水道や海岸でも独自の万歳が生み出され、徐々に浸透している。今回は国土交通省への取材に基づき、各万歳の歴史やその作法を解説する。これから迎える総会シーズンでぜひ活用してはどうだろう。

■一般にも浸透しつつあるダム式万歳

ダム式万歳は民間企業によってグッズ化している

ダム式万歳は民間企業によってグッズ化している[/caption] 「ダム式万歳の成り立ちは諸説ある」と語るのは、中国地方整備局出雲河川事務所長時代にダム式万歳のパネル展示を行った水管理・国土保全局治水課の舛田直樹企画専門官だ。「JR木次線の開業100周年イベントでパネル展示を行い、それをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で発信したことがきっかけで手ぬぐいの作成オファーにつながった」と話す。
 手ぬぐいに記された作法をまとめると、まず足を肩幅に広げて安定感を確保しながら、自分自身をダムと思いこむ。次に膝を90度に曲げ地盤の力強さ、つま先を135度に開き安定勾配を表現。このつらい姿勢のまま、あいさつが終わるまで耐える。最後にダムが徐々にできあがっていくのをイメージしながら「バン、ズァーイ!」のかけ声で体全体を持ち上げるように3唱する。
 舛田専門官は「先輩から足の角度や手のひらを上に向けるなどさまざまな指摘を受けた。手ぬぐいに記した作法は見栄えのするものが採用されたと聞いている」と振り返る。いまでは、工事関係者だけでなくダムマニアと呼ばれる一般人にも浸透しているそうだ。

■省庁またぐ海岸式万歳
 迫り来る波を表現した「海岸式万歳」は、ことし3月に『海岸式バンザイの技術上の基準・同解説』を改定し、普及に力を入れている。海岸式バンザイ技術研究会に名を連ねる水管理・国土保全局海岸室の藤田士郎海洋開発企画官は「海岸式は省庁をまたぐ万歳だ。海岸4省庁(国交省海岸室、同省〈旧運輸省〉港湾局、農林水産省、水産庁)の会議の場でも手を取り合って考え方を共有してきた」と力を込める。
 その由来は2009年にさかのぼる。国土交通大学校の海岸研修で宮崎海岸の当時の担当者によって発案された。海岸式には「海岸事業は多くの人と連携しながら、大波のように大きなエネルギーとなって、関係者が一体となって進める精神が重要である」という崇高な理念が定められている。

海岸式は参加者が手をつないで万歳する

 技術基準の所作によると、全員で手をつないで小さく揺らすところからスタートする。最初はバラバラに揺らしていた手の揺れを徐々に大きくしながらそろえていくことで、沖合の小波から、陸に向かって次第に収束していく大波、うねりを表現する。最後にリーダーの「いい波が来たぞー!」というかけ声にあわせて全員で万歳する。

■下水道は業界を超えた普及に意欲
 河川のダム式万歳に負けないため、11年に開発したのが「下水道バンザイ」だ。水管理・国土保全局下水道部下水道事業課の石井宏幸事業マネジメント推進室長は「下水道バンザイは既に関係業界団体には浸透している。今後は汚水処理4省(国交省、農水省、環境省、総務省)の連携の場で活用を目指したい」とさらなる普及に意欲をみせる。

下水道バンザイ
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 下水道式は当時の国交省下水道事業課長の指示を受けた職員2人が開発した。下水管渠は1本1本がつながってこそ機能を果たせるとの信条の下、ソケット(管継手)と基礎の締め固めを万歳で体現する。手順は基本姿勢として肩幅より広く足を開き、しっかりと腰を落とす。目の前に肩幅くらいの下水管渠があることをイメージし、手を下から上に持ち上げる。そして横に両手を広げてソケットを表現し、「げすいどう!」の掛け声の後に万歳三唱する。

 水害の激甚化や渇水、南海トラフによる津波など水関係行政を取り巻く環境は非常に厳しい。その中で、国民生活の安心・安全に貢献するのがダムであり、下水道であり、海岸堤防である。万歳は中国の皇帝の長寿を祝う「千秋万歳」が転じたそうだ。インフラによって持続可能な国土が千年も万年も続くことを祈って万歳したい。

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