【"路上待機"を削減】竹中工務店の工事車両駐車ヤード確保の取り組み「TAK-station」とは? | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【“路上待機”を削減】竹中工務店の工事車両駐車ヤード確保の取り組み「TAK-station」とは?

 ダンプトラックやコンクリートミキサー車といった大型車両が絶えず行き交う建設現場。そうした工事車両の周辺での待機は交通渋滞の発生など近隣にとって迷惑となってしまうケースも少なくない。いわゆる路上駐車の削減や運転手の休憩といった環境改善を目的に、ゼネコンが工事車両向けの待機ヤードを提供している事例がある。竹中工務店の「TAK-station」だ。

 東京本店が運営する「TAK-station」は、現場近くの敷地を借り上げて、同社が施工する現場に鉄骨や生コンクリートといった資材を搬入する大型車両が一時的に待機できる駐車スペースを提供する取り組み。現場に到着した工事車両の路上駐車を、企業努力として待機ヤードの提供によって解消することが狙い。

 というのも、資材を搬入する工事車両は工事の進捗に合わせたオンタイムスケジュールで現場への到着が求められる。「ドライバーにも、遅れるわけにはいかないという意識が働く。その結果として、どうしても早めに到着して周辺で待機しているという実態があった」(岡村克己東京本店次長)。

 しかし、工事車両の路上待機は交通事故などのトラブルや近隣の交通渋滞を誘発するという社会的なリスクもはらむ。竹永伸明技術部生産支援1グループ長は「現場における対策として毎朝、周辺を巡回して待機している工事車両の有無を確認するなど地道な取り組みを続けてはいたが、実態として待機車両がなくならないという課題があった」と振り返る。

岡村次長(右)と竹永グループ長

◆第2弾芝浦エリア着実に活用広がる
 対策として打ち出されたのが、現場周辺の敷地を借り上げて工事車両の待機ヤードを確保する取り組みだった。

 「東京本店として工事車両による路上駐車を解消するための待機ヤードを確保すべきという大きな方針があった。受注する段階で敷地の確保や運営のコストを見込んでいるわけではない。損益的には厳しいが、それでも取り組まなくてはならないという強い思いがあった」(岡村次長)。

 第1弾として、2018年10月に虎ノ門エリアに設置した「TAK-station」は、同社が施工する近隣の大規模プロジェクト向けに昨年10月まで約1年間にわたって運用。「現場からほど近い場所に待機ヤードを確保できたこともあって、かなり有効に機能した。現場から“これがなかったら現場はうまく回らなかった”という声もあったほど効果的に活用された」(同)。

 そうした現場からのニーズに応えるように昨年8月、都内の多くの現場が活用できる第2弾の「TAK-station」を芝浦エリアに開設。“おおむね30分圏内”の範囲にある現場を中心に、その活用は着実に広がっている。

TAK-station芝浦。周辺環境に配慮しながら工事をスムーズに進めていくために活用の域は広がっている

◆24時間体制移行で夜間・早朝に対応
 現場や協力会社へのアンケートによって、夜間に走行してきた特殊車両が朝方に駐車したいといった声や、夜間工事などで夕方以降に停めたいといったニーズも確認されたことから、ことし8月に“24時間体制”での運用に移行。電話や社内のウェブシステムから予約を入れることで、夜間や早朝であっても効果的に活用することができる。

 「工事車両の待機による交通事故や渋滞リスクをなくしたいというのが取り組みの出発点。元請け(発注者)としては、協力会社に対して基本的に何時に入ってくださいという指示しか持ち合わせていなかったが、予定していた時間よりも早く到着した場合にどうしたらよいのかという部分で言えば、待機ヤードという手段を用意できていることは大きい」(岡村次長)。

 「プロジェクトの推進にとって社会に対する安全・安心は重要な要素となる。それは単に仮囲いの中だけの話ではない。周辺環境に配慮しながら、いかに工事をスムーズに進めていくかということからしても、敷地の確保などのハードルはあるが、今後も取り組みを継続していきたい」(竹永グループ長)と話す。

ひと口メモ/建設産業のモデルケースに/愛宕警察署から感謝状

 工事車両の路上待機による交通事故のリスク低減や近隣の交通渋滞の解消は多くの建設現場に共通する課題。行政機関や関連する業界団体などが連携して、総合的な対策を推進する警視庁の駐車対策協議会でも建設現場における路上駐車の削減は重要テーマの1つになっている。

 竹中工務店は、その駐車対策協議会で建設業として初めてプレゼンテーションを実施。愛宕警察署から感謝状が贈られているように、第1弾となった虎ノ門エリアでの「TAK-station」設置の取り組みは、建設産業におけるモデルケースとして広く認知されている。

 虎ノ門の「TAK-station」利用車両のアイドリングストップの推進によって、約1年間の稼働期間で約100tものCO2排出量の削減につながったという試算結果もあるように、路上駐車の削減や運転手の休憩といった環境改善だけでなく、環境負荷の抑制に対する効果もある。

 「TAK-station」の設置は、大型車両の駐車スペースを確保できるだけの土地の広さや現場からのアクセス性、近隣との調整といった土地の選定だけでなく、賃借・運用のコストなどのハードルもあるだけに、まさに同社の企業努力が結実した社会貢献の取り組みと言える。

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