【検査を3割時短】長谷工コーポレーションが導入する排水管通球試験システム「Drain Trace」 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

B・C・I 未来図

【検査を3割時短】長谷工コーポレーションが導入する排水管通球試験システム「Drain Trace」

 「1日がかりの検査が午前だけで済むようになった。時間にして3割ほど短縮できている」。長谷工コーポレーション関西の別納俊夫設備1部部長は、新築分譲マンションの竣工前検査に全面導入する排水管通球試験システム「Drain Trace(ドレイントレース)」の効果を口にする。2020年度の社内技術表彰では優秀賞を獲得、しかもICT関連としては初の受賞となった。

左から別納部長、中邨統括部長、高原チーフ


 分譲マンションは1住戸当たり2-3系統の排水立て管が配置され、これまでの検査では管の中にソフトテニスボールを入れ、屋上から下層階まできちんと流れるかを確認していた。上と下に作業員を配置し、トランシーバーで連絡しながら1系統ずつ検査し、その結果は現場事務所に戻り、報告書としてまとめていた。

 全面導入したシステムは、非接触による電子タグデータ自動認識技術「RFID」をベースに構築し、タグ付きボールの情報を、スマートフォンと連動した専用リーダーで読み取る仕組み。ボールと系統個所のデータが連動しているため、1系統ずつ確認しながらボールを投入する従来の検査手間がなくなり、滞留時間も把握できる。結果はクラウドに集約され、報告書に反映できることから、検査とともに検査後の事務作業も同時に効率化する。

 開発のきっかけは、同社と協力会社組織「建栄会」が品質向上や業務効率化などを目的に推進しているバリューアップ活動だった。設備部会からRFIDの活用が発案され、アプリケーションの開発に並行し、タグへの衝撃を効果的に吸収できるようにボールの形状も試行錯誤を繰り返してきた。2018年5月から実現場で試行導入を進めながら、20年4月からは全社展開がスタートした。

 別納氏は「当初は担当する協力会社に戸惑いもあったが、大幅な業務効率化が実現することから、導入が一気に進んだ」と説明する。設備検査にかかわる協力会社は全国で20社に達する。マンション事業者によっては検査方法を厳密に定めているケースもあるが、同社が設計施工する分譲マンションの大半は新システムに切り替わった。

 「バリューアップ活動の観点からスタートした試みだが、部門としてはICT推進の先行事例でもある」と、建設事務部ICT推進チームの高原雄樹チーフは強調する。社内では現場検査にウェアラブルカメラの導入をスタートするなど、さまざまな切り口からICTの活用を推し進めている。全社展開するBIMの取り組みもICT活用の流れに通じる動きだ。BIMは新規設計案件への100%導入体制を確立し、施工段階にも導入を始めた。

 建設BIM推進部と設備1・2部を束ねる中邨浩司統括部長は「品質向上と生産性向上が同時に図れるICTの可能性は大きい。社内では多様な取り組みが進み、費用対効果が高いものから優先して現場導入に踏み切っている。排水管検査で得た新たなノウハウも、新たな展開へとつなげていきたい」と力を込める。

タグ付きボールの情報を専用 リーダーで読み取る



【BIM/CIM LIVE 2020 第4回】申し込み受付中!(参加無料)



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら



関連記事

関連記事は存在しません