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【寄稿・原広司氏を偲んで】小泉アトリエ主宰、東京都立大教授小泉雅生

最終更新 | 2025/03/05 13:37

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07年3月に訪問したドミニカ共和国(左から故小嶋一浩氏、原氏、山本理顕氏)


小泉氏

 原広司先生が88歳で逝去された。自分は大学院修士課程の2年間を原先生のもとで過ごした。当時の東京大学生産技術研究所の原研究室には小嶋一浩、伊藤恭行、堀場弘、工藤和美といった先輩が在籍し、既に学内外で積極的な活動を展開されていた。

 “棲み着いた”がごとくの先輩もおり、あたかも梁山泊のような様相を呈していた。その梁山泊の主たる原先生もまたサマーベッドで寝起きするなど、伝統的な本郷キャンパスとはまったく異なる空気感だったことを覚えている。

 その原先生の下で何を教わったのかと問われれば、建築家としてあるべき姿を学んだということに尽きる。正直のところ原先生の繰り出す言葉は難解で十分理解できたとは言いがたいし、デザイン言語も独特で容易にまねができるものでもなかった。だが常に建築に正面から向き合う、原先生の姿勢に大きく感化されたことは間違いない。

 在学中に研究室の仲間とともにシーラカンスという設計組織を立ち上げたが、大学院修了後しばらく海外を放浪しようと思い立った。その際、研究室に籍を残そうと先生の元に相談に伺ったら、しばしの黙考の後、外に出ろ、建築家として名乗れと背中を押された。今思えば、退路を断ち、建築家としての矜恃(きょうじ)を保てという、強いメッセージであったと思う。

 その後15年ほど経ち中南米を訪れる機会があり、ウルグアイのモンテビデオで実験住宅を計画されていた原先生のところに伺った。そこで目にしたのは70歳近い先生がトレーシングペーパーに描いた分厚い図面の束と施工性を確認するために自ら部材を調達してつくられた模型であった。既にCADで図面を書くのが当たり前の時代に、細部に至るまで自身の手で把握しようとする建築との向き合い方に衝撃を受けた。

原氏


 訪問先のモンテビデオの大学の先生も、原先生の人柄に触れ、初めて東洋の「師(master)」という概念が理解できたとおっしゃっていた。文化や言葉の違いを超えてその姿勢は伝わるのだろう。

 哲学者然とした風貌と難解な語り口から気難しい人物像をイメージされる方もおられるかと思うが、実は先生が関心を持たれる範囲は極めて広かった。よく知られた粟津潔や大江健三郎といった美術・文学・音楽の分野の方々との交流だけでなく、スポーツや芸能界にも興味を示し、建築同様の緻密さで真剣に分析されていた。

 なかでもマージャンや将棋といった勝負事には並々ならぬ関心を持たれ、どこで勝負をかけるのか、どこに勝機を見つけるのかを常に探られていた。そのスタンスは徹底しており、研究室旅行での「大貧民」でも終わってみればいつも原先生が上位にいた。建築家として社会と対峙し、勝負を仕掛けていく上では的確な状況判断が重要だということなのだろう。

 常に関心を広く持ち冷静な分析力を持つこと、そしてここぞという時の勝負にこだわること、それが建築家として欠くことのできない資質であることを教わった。

ヤマトインターナショナル


 自分と先生との関係を述べるばかりではいけないだろう。最後にやはり原先生の建築について語っておきたい。原先生は大きな「地形」を描きだした建築家だと思う。都市が織り込まれた反射性住居、地層が表出したかのようなヤマトインターナショナル、まちの上空に空中庭園を出現させた新梅田シティ、諸層を斜めに貫通する大階段のある京都駅、そして大きく谷をまたいでいく宇宙船のような宮城県図書館。スケールを問わずその構想力を遺憾なく発揮された。

梅田スカイビル


 これらのイマジナティブな地形はなぜ生みだされたのだろうか。原先生は、しばしば距離をとりながら相互がつながる離散的な集合という空間モデルに言及された。離散的な集合の土台として、大きな地形を想起されたのではなかろうか。

 原先生が築かれた原研究室という大きな地形の上で、残された私たちは、離れつつ自らが立つ、離散的な集合を築けるのか、それが問われているように思います。原先生のご冥福をお祈りいたします。
 

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