そこが聞きたい・飛島建設執行役員土木本部長 阪口 朗氏 | 建設通信新聞Digital

7月8日 火曜日

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そこが聞きたい・飛島建設執行役員土木本部長 阪口 朗氏

【土木本部の役割は?/受注・収益安定化し現場力継承】

 飛島建設の執行役員土木本部長に阪口朗氏が就任した。「まずは受注と収益の安定化を図る」ときっぱり。建設現場の問題点を社内で共有し、課題の早期発見と解決を図るために立ち上がったフィールドサクセスセンター(FSC)にも触れ、「効果的に運用し、成果を示していく。本部でできる業務はFSCが担い、現場は施工管理に注力することで、飛島建設のDNAである現場力を継承していく」構えだ。飛島ホールディングスの中核となる飛島建設の中でも“けん引役”を担う土木事業を率いる阪口本部長に、土木本部の今後の方針などを聞いた。 FSCが設立されて3年目となる。作業所を直轄・一元管理するため、コミュニケーションを充実させて風通しの良い組織をつくっていく。「本部やFSCで策定した施策の展開が作業所内に浸透されているか、安全成績が一つのバロメーターになる」との考えを示しており、「安全管理を軸に現場の効率化を進める」考え。
 土木の事業量、現場数を維持するため、「若手を登用していく」方針を示す。「今年度は、35-40歳の若手作業所長を誕生させたい」とし、人材育成の方針を大きく転換する。「これまでは、ダムやトンネルといった限定した工種のスペシャリストとして育成してきた。今後は、誰でもどのような現場にも対応できるよう、幅広い工種を経験させる」方針だ。新入社員研修のプログラムも今年度から変更し、より多くの現場で経験を積めるようにしている。
 国内の土木市場は、「新設が減り、リニューアルの需要が増えてくる」とみる。民間土木工事では、発電所のリプレースや、小水力発電の開発、設計施工を中心とした再生可能エネルギーに関連する事業の実績を伸ばしていく。
 インフラの老朽化が顕在化していることから、鉄道の高架橋やトンネルの改修、耐震化のほか、道路のトンネル改修、自動車専用道路の床版架け替えなどに力を入れており、「さらに成長させていく」とする。
 「特に、高速道路の床版架け替えが加速していく」とし、「交通規制を短縮できる『ハイドロジェットRD工法』をアピールする」。同工法は、阪神高速道路、第一カッター興業と開発した。交通規制を実施せずに、鋼桁とRC床版の接合部をウオータージェットで分離する。「既設の床版を撤去する時だけ交通規制を実施するため、従来の方法に比べて大幅に交通規制を短縮でき、渋滞などの社会影響を抑えられる」とメリットを語る。NEXCO東日本が発注した東北自動車道の案件で採用されており、「次の営業展開へつなげたい」と力を込める。
 「官庁土木工事が基礎体力の部分になる」とも。国が発注する工事は、トンネルと河川に関連する案件を中心に継続的に受注していく。道路トンネルの覆工再生工事にも取り組む。地方では、強みである下水道施設の案件を確実に受注する
 海外では、ODA(政府開発援助)事業に取り組んでおり、上水道や給水、農業用水の工事の実績がある。「地域と工種を選別し、継続して案件に取り組む」姿勢だ。

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 (さかぐち あきら)1989年3月東海大海洋学部海洋土木工学科卒。91年1月飛島建設入社。2024年4月執行役員名古屋支店長、同年10月執行役員土木本部副本部長兼土木FSC部長を経て、25年4月から現職。趣味は野球観戦。座右の銘は、出身高校の校訓である「正思明行」。物事をしっかりと考え、自信を持って行動するという意味を持つ。監理技術者として携わった名古屋高速道路の現場が思い出深く、「地域に役立つことが分かり、通るたびにやって良かったと思う」と目を細める。大阪府出身。64年10月20日生まれ、60歳。