GWベンチャーズ2号ファンド/現場作業の40%自動化へ/ロボ・建機にも積極投資 | 建設通信新聞Digital

7月18日 金曜日

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GWベンチャーズ2号ファンド/現場作業の40%自動化へ/ロボ・建機にも積極投資

米国建設業界における生産性は過去70年間向上していない(井口氏提供)
井口氏
 深刻な担い手不足に直面する建設業界では、デジタル化の推進を担うテック系スタートアップ(新興企業)の存在感が高まっている。その成長を支えるベンチャーキャピタル(VC)から新たな取り組みとして、「グレートウェーブベンチャーズ2号ファンド」が組成された。建設現場の自動化と省人化を主な投資テーマに掲げ、2035年までに現場作業の40%を自動化するというビジョンを描く。従来のVCが敬遠しがちなロボティクスや建機などハードウエア分野にも積極投資を行う。 ファンドを組成したのは、米ニューヨークと東京を拠点に活動するVCのGreat Wave Venturesだ。代表の井口信人氏は、米国最大規模ヘッジファンドであるBridgewater Associatesでの投資経験などを持つ。
 井口氏は「米国ではソフトウエア投資が先行しているが、現場の生産性は日本と同様に依然として伸び悩んでいる」と指摘する。ただ、「AI(人工知能)の進化により開発コストが下がってきており、今後はロボティクスや建機などハードウエア分野の革新が加速するだろう」と見通す。
 20年に同氏が設立した1号ファンド(旧アギャ・ベンチャーファンド)では計3200万ドル(約47億円)を調達。米国最大規模のアクセラレータープログラムで、ユニコーン企業を多数輩出している「Y Combinator」出身企業10社以上などを含めて計39社に投資した。
 今回、活動を本格化する2号ファンドでは、先進的なまちづくりや、不動産・建設分野の生産性向上に寄与する技術に特化したスタートアップへの投資を行う。
 米ハーバード大学などアイビーリーグの大学や起業家とのネットワークを活用し、有望な投資先を掘り起こす体制も整えている。さらに出資先企業との連携支援も強化する方針だ。
 2号ファンドには、長谷工コーポレーション、戸田建設、東急建設といったゼネコンに加え、福井コンピュータや不動産関連企業なども出資している。調達額は数十億円規模に達する。
 1号ファンドでは北米スタートアップへの投資が中心だったが、2号ファンドでは国内スタートアップへの投資も積極的に行う。米国での投資・支援実績を生かし、日本企業の成長を支援する。
 投資先の選定には、独自の生産性指標などを用いる。既に、木造建築自動化ツールを提供する「Generate」や、インフラ向け耐腐食鉄筋を開発する「Allium Engineering」など米企業のほか、衛星データを活用した不動産探索AIツールを手掛ける「Penetrator」(東京都文京区、阿久津岳生代表)にも出資した。
 井口氏は「新しいテクノロジーの普及を後押ししたい。日本もスタートアップを支援する土壌は整いつつある。出資企業同士の連携も含めて取り組みを広げ、その起点となることを目指したい」と意欲を示す。今後は、米国と日本の技術交流を促すとともに、日本発の技術の海外展開にも注力する方針だ。