【人間中心のDX実現/現場の仕事こそ価値/改革に終わりはない】
前田建設が中心となってスタートさせた経営改革の取り組みはインフロニア・ホールディングス(HD)全体へと広がりつつある。従来業務の刷新、高付加価値部門への転換が進むと同時に、改革の推進力であるDX(デジタルトランスフォーメーション)は新たな段階へと入った。今年4月、アクセンチュアとの共同出資による新会社「インフロニアストラテジー&イノベーション(ISI)」を設立した。ロボットによる完全自動化ではなく、エンジニアの判断能力をICTで最大限に拡張し、意思決定の高度化を推進する“人間中心のDX”を目指す。外部の知見を取り入れ、社内の限界を乗り越えた先には何が実現するのか。
ISIの廣田憲治氏(前田建設執行役員情報担当兼情報システム総合センター長)は「土木では、所長の経験やノウハウに頼っていた原価管理を標準化し、新しい世代に引き継ぐ試みを進めている。建築では受注や施工管理のデータを集約することで、コスト上のリスクを早期に把握できるシステムを構築し、その運用を始めた」と説明する。
DXに取り組むゼネコンが増えているが、ISIの金地毅氏(アクセンチュア)は「エンジニアの認知能力を拡張するためにICTを活用するイメージだ。DXというと、全自動化に主眼が置かれる取り組みが多い中で、適切な箇所にエンジニアの知見が投下されるマネジメントの仕組みを高度化している点が特徴だ」とその新規性を強調。「建設現場での仕事こそが価値であり、その価値を生み出すエンジニアが報われるようにしたい」と率直に語り、「短期的には品質、安全で顧客に不利益を発生しないようにし、事業運営の観点でも業績の安定化が期待できる」と展望を示す。
インフラ運営事業でも水道管の劣化予測や施設の電力の最適化、適切な修繕計画の立案といった展開策を計画する。「適正なコストで各インフラのパフォーマンスを上げるための現実的なロードマップを示すことを見据えている」(金地氏)という。
アクセンチュアとの合弁会社という点も差別化のポイントだ。廣田氏は「どの会社もそうだと思うが、内部からの改革には限界がある。愛知道路コンセッションをきっかけに始まった協業をさらに一歩進める形で、アクセンチュアにも主体的に取り組んでもらうことを目的に会社設立に至った」と説明。ISIの田口真理子氏(アクセンチュア)も「外部から伝えることはできても、結局、現場やIT部門に取り組むべきことをやり切ってもらわなければならない。そのためには、私たちも当事者意識を持ってやり切る、お互いにコミットする必要があった」と強調する。
システムによる業務変革だけでなく、ISI設立にはインフロニアHDの人材育成の効果も見込む。廣田氏は「情報システム総合センターから出向している社員が多いが、土木や建築出身者もいる。将来的に前田建設などの事業会社に戻り、改革を担える人材に育ってほしい」と期待を込める。「改革に終わりはない。この取り組みでビジネスに生かせるITに変わっていかなければならない。前田建設、そしてインフロニアHD全体へと改革を広げていくことが目指す姿だ」と強い決意で臨む。
前田建設が中心となってスタートさせた経営改革の取り組みはインフロニア・ホールディングス(HD)全体へと広がりつつある。従来業務の刷新、高付加価値部門への転換が進むと同時に、改革の推進力であるDX(デジタルトランスフォーメーション)は新たな段階へと入った。今年4月、アクセンチュアとの共同出資による新会社「インフロニアストラテジー&イノベーション(ISI)」を設立した。ロボットによる完全自動化ではなく、エンジニアの判断能力をICTで最大限に拡張し、意思決定の高度化を推進する“人間中心のDX”を目指す。外部の知見を取り入れ、社内の限界を乗り越えた先には何が実現するのか。
ISIの廣田憲治氏(前田建設執行役員情報担当兼情報システム総合センター長)は「土木では、所長の経験やノウハウに頼っていた原価管理を標準化し、新しい世代に引き継ぐ試みを進めている。建築では受注や施工管理のデータを集約することで、コスト上のリスクを早期に把握できるシステムを構築し、その運用を始めた」と説明する。
DXに取り組むゼネコンが増えているが、ISIの金地毅氏(アクセンチュア)は「エンジニアの認知能力を拡張するためにICTを活用するイメージだ。DXというと、全自動化に主眼が置かれる取り組みが多い中で、適切な箇所にエンジニアの知見が投下されるマネジメントの仕組みを高度化している点が特徴だ」とその新規性を強調。「建設現場での仕事こそが価値であり、その価値を生み出すエンジニアが報われるようにしたい」と率直に語り、「短期的には品質、安全で顧客に不利益を発生しないようにし、事業運営の観点でも業績の安定化が期待できる」と展望を示す。
インフラ運営事業でも水道管の劣化予測や施設の電力の最適化、適切な修繕計画の立案といった展開策を計画する。「適正なコストで各インフラのパフォーマンスを上げるための現実的なロードマップを示すことを見据えている」(金地氏)という。
アクセンチュアとの合弁会社という点も差別化のポイントだ。廣田氏は「どの会社もそうだと思うが、内部からの改革には限界がある。愛知道路コンセッションをきっかけに始まった協業をさらに一歩進める形で、アクセンチュアにも主体的に取り組んでもらうことを目的に会社設立に至った」と説明。ISIの田口真理子氏(アクセンチュア)も「外部から伝えることはできても、結局、現場やIT部門に取り組むべきことをやり切ってもらわなければならない。そのためには、私たちも当事者意識を持ってやり切る、お互いにコミットする必要があった」と強調する。
システムによる業務変革だけでなく、ISI設立にはインフロニアHDの人材育成の効果も見込む。廣田氏は「情報システム総合センターから出向している社員が多いが、土木や建築出身者もいる。将来的に前田建設などの事業会社に戻り、改革を担える人材に育ってほしい」と期待を込める。「改革に終わりはない。この取り組みでビジネスに生かせるITに変わっていかなければならない。前田建設、そしてインフロニアHD全体へと改革を広げていくことが目指す姿だ」と強い決意で臨む。