就任インタビュー・国土交通省国土地理院長 河瀬和重氏 | 建設通信新聞Digital

8月25日 月曜日

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就任インタビュー・国土交通省国土地理院長 河瀬和重氏

【地図情報3D化を推進/測量士資格の在り方見直す】
 1日付で国土交通省国土地理院長に就任した河瀬和重氏が、日刊建設通信新聞社のインタビューに応じた。「国土地理院にはオーソリティーとしてわが国の領土を明示する役割がある。また、位置を決定することの技術基準をしっかり管理することも重要な任務だ。国民の負託に応えられるよう組織を挙げてしっかりと取り組む」と意気込む。災害対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)への下支えとなる電子国土基本図(地図情報)の3次元化を進めるほか、測量士・測量士補の資格の在り方も見直す。
 地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現を目指す第9次基本測量に関する長期計画は、本年度で2年目となる。「10年先を見据え、毎年アクションプランを制定し、向こう3年間のあるべき姿をイメージしながら計画を進める」と語る。
 計画の主要事項の一つである電子国土基本図の3次元化に力を入れる。3月には試作データを公開。関係者から意見を募り改良を加えていく方針だ。「平面の地図情報に高さを加えることで、例えば洪水が発生した時にどの建物に避難すれば良いか判断できる。今後実用化されるであろうドローンを使った物流でも、目的地まできちんと運行するための基礎情報としても活用できる」と利点を挙げ、目標に掲げた「2028年度末までの国土全域3次元化」に意欲を見せる。
 地図情報の鮮度については「われわれとしては、更新の頻度はまだ満足がいくような状況ではない」と率直に語る。「空中写真などで新旧を比較できれば、災害時にどの箇所に変化があったかを情報として把握できる。また災害対応する際に直近の情報がなければ、どのルートが通行可能か判別がつきにくくなる」と重要性を強調する。
 測量分野のDXに関しては、AI(人工知能)やドローン、自動運転車両などの機械に適した地図情報の開発に興味を示す。「人間が見て理解できる情報が機械も理解しやすいものとは限らない。将来的な話になるが、機械が受け取りやすいデータが整備できたら効率化につながるのではないか」と展望する。
 4月に施行した改正測量法に基づき、測量士・測量士補の資格の在り方の見直しにも着手する。現行の体制では、資格については測量行政懇談会の下にある測量資格検討部会で議論するが、「独立した会議体の設立を視野に入れて検討を進めていく」考えだ。
 資格を取るには、文部科学大臣などの認定を受けた大学や専門の養成施設を卒業・修了したり、国家試験に合格したりとさまざまなルートがあるが、「資格者が全員、同じ程度の知識や技能を備わっているか、問題意識を持っている」とし、「測量士、測量士補に本当に必要なレベルを議論していきたい」と力を込める。
 建設業界には改めて公共測量の重要性を認識することを望む。「公共測量として決められたスペックで正確に測量することで、その成果を工事に生かすことができる。この好循環を多くの人に知ってほしい」と願っている。