【ダム運用高度化で治水対策】
気候変動による水災害の激甚化・頻発化が予測される中、重要な社会資本であるダム整備に加え、既設ダムの有効活用による治水・利水の効率的な運用が大きく期待されている。一方で、少子高齢化に伴う担い手確保も喫緊の課題となっている。「ダムによる治水対策がこれからますます重要になる」と指摘する水資源機構の金尾健司理事長に機構の取り組みと今後の展望を聞いた。 機構では、全国7水系でダム、水路をはじめ湖沼開発施設など54施設を通して、水源と水路ネットワークの一体的な管理により必要量の水供給と水災害から地域を守る役割を担ってきた。
「ダムを含めた施設整備は一朝一夕で解決するものではない」からこそ、ハード整備の着実な推進とともに、ダム再生事業や利水ダムの事前放流、利水容量の一部の治水容量への振り替えなどといったダム運用の高度化を図る。「既存施設を最大活用する事前防災対策が肝要」と説く。
ソフト面から治水効果をさらに発揮させるためにも「個々のダム運用についても高度化が求められる」と強調する。現在、長時間アンサンブル降雨予測を活用した効率的なダム操作の試行にも取り組む。降雨パターンのシミュレーションに基づき「貯留や放流に際してダム管理者が柔軟に対応できるようになるのが大きなメリット」と期待を寄せる。
国土交通省の推進する流域総合水管理は「政策の具体化に伴って当機構も流域全体を俯瞰(ふかん)した施策を展開していく」との考えを示す。上流の水源ダム施設から中下流部の水路ネットワークを一元的に管理する「インフラ管理のノウハウを持った技術者集団」であり、関係者間の調整役も担う。また、吉野川水系、筑後川水系、木曽川水系など、管理ダムの受託業務を展開するなど「水系一貫で効率的な運用ができることが強み」と強調する。
ダム貯水池周辺や集水域の保全、地域づくりからも「水源地域に寄り添った振興も欠かせない」という。木曽川水系阿木川ダム(岐阜県恵那市)では、管理用水力発電所の電力を地域電力会社に売却・供給しエネルギーの地産地消を促進することで同市のカーボンニュートラル実現に貢献している。「水源地域の地域創生に向けたプランディングなどの取り組みを通しながら、地域振興へ少しでも寄与していきたい」と見据える。
今年4月に現場組織を再編し、31あった管理所を18の総合管理所に集約した。「効率的な業務遂行」が狙いで、職員の多い総合管理所に若手技術者を配置することで、「日常業務でのコミュニケーションやOJT(職場内訓練)による技術承継にも期待している」と明かす。また、人財育成・採用戦略課を設置し、ベテラン職員による少人数制講座など若手職員のスキルアップと技術の継承にも力を注いでいる。
幅広い人材確保に向け、多様な採用選考制度を設けるとともに、インターンシップやリクルート活動など「現役学生に対する知名度向上にも注力する」ことで教育機関との関係強化を図る。
気候変動による水災害の激甚化・頻発化が予測される中、重要な社会資本であるダム整備に加え、既設ダムの有効活用による治水・利水の効率的な運用が大きく期待されている。一方で、少子高齢化に伴う担い手確保も喫緊の課題となっている。「ダムによる治水対策がこれからますます重要になる」と指摘する水資源機構の金尾健司理事長に機構の取り組みと今後の展望を聞いた。 機構では、全国7水系でダム、水路をはじめ湖沼開発施設など54施設を通して、水源と水路ネットワークの一体的な管理により必要量の水供給と水災害から地域を守る役割を担ってきた。
「ダムを含めた施設整備は一朝一夕で解決するものではない」からこそ、ハード整備の着実な推進とともに、ダム再生事業や利水ダムの事前放流、利水容量の一部の治水容量への振り替えなどといったダム運用の高度化を図る。「既存施設を最大活用する事前防災対策が肝要」と説く。
ソフト面から治水効果をさらに発揮させるためにも「個々のダム運用についても高度化が求められる」と強調する。現在、長時間アンサンブル降雨予測を活用した効率的なダム操作の試行にも取り組む。降雨パターンのシミュレーションに基づき「貯留や放流に際してダム管理者が柔軟に対応できるようになるのが大きなメリット」と期待を寄せる。
国土交通省の推進する流域総合水管理は「政策の具体化に伴って当機構も流域全体を俯瞰(ふかん)した施策を展開していく」との考えを示す。上流の水源ダム施設から中下流部の水路ネットワークを一元的に管理する「インフラ管理のノウハウを持った技術者集団」であり、関係者間の調整役も担う。また、吉野川水系、筑後川水系、木曽川水系など、管理ダムの受託業務を展開するなど「水系一貫で効率的な運用ができることが強み」と強調する。
ダム貯水池周辺や集水域の保全、地域づくりからも「水源地域に寄り添った振興も欠かせない」という。木曽川水系阿木川ダム(岐阜県恵那市)では、管理用水力発電所の電力を地域電力会社に売却・供給しエネルギーの地産地消を促進することで同市のカーボンニュートラル実現に貢献している。「水源地域の地域創生に向けたプランディングなどの取り組みを通しながら、地域振興へ少しでも寄与していきたい」と見据える。
今年4月に現場組織を再編し、31あった管理所を18の総合管理所に集約した。「効率的な業務遂行」が狙いで、職員の多い総合管理所に若手技術者を配置することで、「日常業務でのコミュニケーションやOJT(職場内訓練)による技術承継にも期待している」と明かす。また、人財育成・採用戦略課を設置し、ベテラン職員による少人数制講座など若手職員のスキルアップと技術の継承にも力を注いでいる。
幅広い人材確保に向け、多様な採用選考制度を設けるとともに、インターンシップやリクルート活動など「現役学生に対する知名度向上にも注力する」ことで教育機関との関係強化を図る。