【GX事業本部立ち上げの狙いは?/洋上風力軌道に、新事業は具体化】
2050年カーボンニュートラル実現に向けて政府が進めるグリーン成長戦略や民間企業が取り組むGX(グリーントランスフォーメーション)インフラ整備を取り込むべく、東洋建設はGX事業本部を立ち上げた。洋上風力をはじめ、海洋・海底資源開発や海底直流送電線事業、CCS(CO2分離回収・輸送・貯留)、ブルーインフラ整備など多岐にわたる分野で事業化を目指す。初代本部長に就任した鷹嶋俊之氏に事業の具体化に向けた今後の道筋を聞いた。 組織規模は従来の洋上風力事業本部と土木本部の海洋開発部、新規事業推進部を統合・集約した約70人。GX企画部、GX営業部、プロジェクト推進部、GX工事部、船舶機械部の五部制でスタートを切ったが「国の方針などに応じて組織の形を柔軟に変化させていく」とし、事業拡大とともに増強も視野に入れる。
その上で、「当面の使命は中期経営計画で成長ドライバーの一つに位置付けている洋上風力事業を確実に軌道に乗せ、工事まで結び付けることだ」と強調する。その中心的役割を期待されるケーブル敷設船(CLV)は艤装(ぎそう)作業完了後、26年6月末に引き渡しを受け、10月ごろに日本へ運ばれる予定だ。CLVとともに活用する海底ケーブル埋設機も製造中で「操船する船員の採用も進めており、日本の海域に対応できるよう一体的な訓練を計画している」と説明する。
三菱商事の秋田・千葉両県沖で進めていた洋上風力発電所開発からの撤退など、事業性の見極めがよりシビアになる状況にあるが、「いろいろな事業者やサプライヤーに接触しながら、風向きを感じ取ろうと動いている」と推進のスタンスは崩さない。
一般海域での事業化が進んでいる着床式の次に注目されている浮体式では、グループ入りした大成建設とのシナジーを見込む。東洋建設が実証するTLP(緊張係留)方式と大成建設が開発するセミサブ型の双方の強みを生かせることに加え、「大成建設の持つ営業力や人脈を活用し、グループ全体での事業拡大に貢献したい」と期待を寄せる。
「リクルート活動でも洋上風力は学生に興味を持ってもらいやすい分野だと感じている。そういった意味で、情報発信も担える位置付けにしていきたい」とも述べた。
GX事業本部が対象とするのは洋上風力だけではない。海洋開発や新規事業も同時並行で進める。例えば、同社が保有する500tづりの自航式多目的船「AUGUST EXPLORER」を活用し、CCS事業や潮流発電用のタービンの設置・撤去作業といった業務に取り組んでいる。
現場だけでなく、設計や営業など38年の経歴を持つ鷹嶋氏をもってしても、新分野への挑戦は一筋縄ではいかない。「ただ、大きく建設業と捉えれば事業に対するリスクの考え方などこれまでの経験が生きる部分はある。英語での折衝や欧州の先進的な施工知見の吸収など新しい知識は早急に入れ込んで、事業を前に進めていく」と力を込めた。
* *
(たかしま・としゆき)1987年3月九工大開発土木工学科卒後、同年4月東洋建設入社。2019年4月土木事業本部土木部長、22年4月執行役員九州支店長を経て、25年9月から現職。初めて主任技術者として担当したトンネル工事が自身の転換点になったと話し、若い世代には『仁・義・礼・智・信』を感じ取って仕事に取り組んでほしいと伝える。モットーは「意志あるところに道は開ける」。福岡県出身。62年11月23日生まれ、62歳。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて政府が進めるグリーン成長戦略や民間企業が取り組むGX(グリーントランスフォーメーション)インフラ整備を取り込むべく、東洋建設はGX事業本部を立ち上げた。洋上風力をはじめ、海洋・海底資源開発や海底直流送電線事業、CCS(CO2分離回収・輸送・貯留)、ブルーインフラ整備など多岐にわたる分野で事業化を目指す。初代本部長に就任した鷹嶋俊之氏に事業の具体化に向けた今後の道筋を聞いた。 組織規模は従来の洋上風力事業本部と土木本部の海洋開発部、新規事業推進部を統合・集約した約70人。GX企画部、GX営業部、プロジェクト推進部、GX工事部、船舶機械部の五部制でスタートを切ったが「国の方針などに応じて組織の形を柔軟に変化させていく」とし、事業拡大とともに増強も視野に入れる。
その上で、「当面の使命は中期経営計画で成長ドライバーの一つに位置付けている洋上風力事業を確実に軌道に乗せ、工事まで結び付けることだ」と強調する。その中心的役割を期待されるケーブル敷設船(CLV)は艤装(ぎそう)作業完了後、26年6月末に引き渡しを受け、10月ごろに日本へ運ばれる予定だ。CLVとともに活用する海底ケーブル埋設機も製造中で「操船する船員の採用も進めており、日本の海域に対応できるよう一体的な訓練を計画している」と説明する。
三菱商事の秋田・千葉両県沖で進めていた洋上風力発電所開発からの撤退など、事業性の見極めがよりシビアになる状況にあるが、「いろいろな事業者やサプライヤーに接触しながら、風向きを感じ取ろうと動いている」と推進のスタンスは崩さない。
一般海域での事業化が進んでいる着床式の次に注目されている浮体式では、グループ入りした大成建設とのシナジーを見込む。東洋建設が実証するTLP(緊張係留)方式と大成建設が開発するセミサブ型の双方の強みを生かせることに加え、「大成建設の持つ営業力や人脈を活用し、グループ全体での事業拡大に貢献したい」と期待を寄せる。
「リクルート活動でも洋上風力は学生に興味を持ってもらいやすい分野だと感じている。そういった意味で、情報発信も担える位置付けにしていきたい」とも述べた。
GX事業本部が対象とするのは洋上風力だけではない。海洋開発や新規事業も同時並行で進める。例えば、同社が保有する500tづりの自航式多目的船「AUGUST EXPLORER」を活用し、CCS事業や潮流発電用のタービンの設置・撤去作業といった業務に取り組んでいる。
現場だけでなく、設計や営業など38年の経歴を持つ鷹嶋氏をもってしても、新分野への挑戦は一筋縄ではいかない。「ただ、大きく建設業と捉えれば事業に対するリスクの考え方などこれまでの経験が生きる部分はある。英語での折衝や欧州の先進的な施工知見の吸収など新しい知識は早急に入れ込んで、事業を前に進めていく」と力を込めた。
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(たかしま・としゆき)1987年3月九工大開発土木工学科卒後、同年4月東洋建設入社。2019年4月土木事業本部土木部長、22年4月執行役員九州支店長を経て、25年9月から現職。初めて主任技術者として担当したトンネル工事が自身の転換点になったと話し、若い世代には『仁・義・礼・智・信』を感じ取って仕事に取り組んでほしいと伝える。モットーは「意志あるところに道は開ける」。福岡県出身。62年11月23日生まれ、62歳。













