政府は１０日、日本成長戦略会議を開き、成長戦略に関連する施策のうち総合経済対策に盛り込む重点施策をまとめた。防災・国土強靱化を戦略分野の一つに位置付け、第１次国土強靱化実施中期計画に基づく取り組みを着実に推進する。労働市場改革や賃上げ環境整備などは、分野を横断して取り組む課題とし、労働時間法制に関する政策対応や事業承継、Ｍ＆Ａ（企業の合併・買収）を含めた中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化に向けた戦略を検討する。　成長戦略は２０２６年夏の策定を目指す。危機管理投資と成長投資の戦略分野としてＡＩ（人工知能）や半導体、資源・エネルギー安全保障・ＧＸ（グリーントランスフォーメーション）、防災・国土強靱化など１７分野を設定。分野を横断して取り組む課題には新技術立国・競争力強化や賃上げ環境整備などの七つを挙げた。
　先行して総合経済対策を策定するため、成長戦略のうち、重要課題の一つである「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」に関連する施策を中心に、重点施策をまとめた。２５年度補正予算での措置などに反映させる方針だ。
　防災・国土強靱化では、事故発生時に社会的影響が大きい上下水道管路を更新するほか、ライフサイクルコストの低減や持続可能な維持管理を実現するため橋梁やトンネルの老朽化対策を進める。集中豪雨による市街地の道路地下構造物の浸水・冠水に備えた局所対策にも取り組む。
　資源・エネルギーの安全保障に関しては、地域共生の対応を強化しつつ風力や地熱などの再エネ導入を促進する。電力の安定供給確保に向け、大規模電源や地域間連系線、地内基幹系統の整備促進への制度的措置を検討する。工場、事業所、住宅の省エネ化や建物の断熱性向上も支援する。
　ＧＸについては、規制改革と一体で戦略地域としてコンビナートの再生やデータセンターの集積を進め、新たな産業クラスターを創出する。
　フードテックでは農地の大区画化、共同利用施設の再編・集約化など集中的に農業構造を転換する。先端技術を活用した完全閉鎖型植物工場や陸上養殖施設への投資を促進する。
　分野横断的課題については、賃上げ環境を整備するため、２６年春季労使交渉に向けた政労使の意見交換を開催する。賃上げ促進税制を活用した賃上げモメンタム（勢い）を維持・向上させる。物価上昇を踏まえて官公需の単価を見直すほか、地方自治体に対して低入札価格調査制度や最低制限価格制度の導入を促す。低入札価格調査制度は国でも工事以外の請負契約への導入を広げる。
　労働市場改革では、人手不足分野での人材確保を進めるため、足元・将来のスキル需要や支援策の実績・成果を検証し支援策の見直しや重点化を検討する。働き方改革関連法が施行し５年が経過することから業種・規模ごとに実態を調査し、心身の健康維持や従業者の選択を前提に労働時間法制に関する政策対応の在り方を多角的に検討する。