【新旧の融合で都市更新/「あいだ」のデザインで関係結ぶ/佐藤総合計画 鉾岩崇(ほこいわ・たかし)社長】
佐藤総合計画の鉾岩崇社長は、成熟した都市の未来を見据え、「これからの都市は大きなブロック単位で刷新されるのではなく、小さい単位ごとに少しずつ変化し、互いにつながり、古いものと新しいものが融合する形で更新していくのではないか」と提起する。こうした社会では、建築とその周りに存在する人や自然、他の建築、都市との関係性が重要になっていくという。
“関係を結ぶ”ために必要なのが「あいだ」のデザインだ。例えば建築と建築、人がつながるためには「それぞれの建築の“際”に人や自然が入り込む余地、奥行きを残しながら設計する」。そうすることで、身体性を感じる空間が生まれ、自然発生的に人の活動が生まれていくのだと説明する。
その中では、人と自然の多様な声に耳を澄まし、他者性を尊重し合う思考が重要になる。この考え方は、建築を自己完結的な存在ではなく、周囲の環境と呼応・連続するものとして捉え、土・緑・水がつながる範囲で小さな循環を生み出し、自然に再接続する試みの「共環域」にも通じる。
これは「個で完結しない」ことが肝で、「相互につながり豊かな関係性を築く」ことこそが、これからの社会に求められる建築の在り方だと信じる。
このような“考え方”を実行するためには、地域や企業、行政を巻き込んだ「仕組みづくり」が欠かせないと指摘。例えば、設計事務所自ら活動のプラットフォームを立ち上げ、共感する協力者を集めるなど、「行動に移す必要がある」と力を込める。
さらに、この仕組みに「どのように人が関わって新しいコミュニティーと接続するのかを考えることも不可欠だ」とし、“人の価値”に焦点を当てる必要性を強調する。
人の価値を追求する上で、AI(人工知能)の進化は転換点でもある。例えば同社では社内設計ポータルとAIを連携させることで「ネット情報と社内データから提案のベースとなる考え方を即座に抽出できるようにした」。これにより「人間が思考する時間を増やせるようになった」と実感している。
この大きな転換は、設計者が持つべき「仮説思考」を追求する上でも役立つ。歴史や文化、風土、時代性といった地域ごとの文脈を読み解きながら、社会の本質的な課題を自ら設定し、それに対して仮説を立て、設計を通して検証する。これを繰り返していく能力が設計者には必要だが、経験と高度な思考力が求められる。しかし、AIがそのような人間の暗黙知を再現できるようになれば、設計者が「さらなる創造力を発揮できる時間を生むようになる」とAIによる変革を歓迎する。
「変わり続けることが大切」。鉾岩社長の数々の思考はいずれも、時代とともに進化し続けている。「変化の過程で新しい目的が生まれる」。この言葉には、“これまでにない建築と都市をつくる”という強い覚悟がにじむ。
(おわり・斉木一宇、武内翔、本田征裕)
【業績メモ】
2025年度の業績は「非常に良い状況」。三つの大型病院の設計プロジェクトを受注できたことも大きい。この背景には「デザインレビュー」の仕組みがしっかり機能したことがある。さらに、同社の主要分野の一つである教育・研究関係の受注も「大変好調」だ。
佐藤総合計画の鉾岩崇社長は、成熟した都市の未来を見据え、「これからの都市は大きなブロック単位で刷新されるのではなく、小さい単位ごとに少しずつ変化し、互いにつながり、古いものと新しいものが融合する形で更新していくのではないか」と提起する。こうした社会では、建築とその周りに存在する人や自然、他の建築、都市との関係性が重要になっていくという。
“関係を結ぶ”ために必要なのが「あいだ」のデザインだ。例えば建築と建築、人がつながるためには「それぞれの建築の“際”に人や自然が入り込む余地、奥行きを残しながら設計する」。そうすることで、身体性を感じる空間が生まれ、自然発生的に人の活動が生まれていくのだと説明する。
その中では、人と自然の多様な声に耳を澄まし、他者性を尊重し合う思考が重要になる。この考え方は、建築を自己完結的な存在ではなく、周囲の環境と呼応・連続するものとして捉え、土・緑・水がつながる範囲で小さな循環を生み出し、自然に再接続する試みの「共環域」にも通じる。
これは「個で完結しない」ことが肝で、「相互につながり豊かな関係性を築く」ことこそが、これからの社会に求められる建築の在り方だと信じる。
このような“考え方”を実行するためには、地域や企業、行政を巻き込んだ「仕組みづくり」が欠かせないと指摘。例えば、設計事務所自ら活動のプラットフォームを立ち上げ、共感する協力者を集めるなど、「行動に移す必要がある」と力を込める。
さらに、この仕組みに「どのように人が関わって新しいコミュニティーと接続するのかを考えることも不可欠だ」とし、“人の価値”に焦点を当てる必要性を強調する。
人の価値を追求する上で、AI(人工知能)の進化は転換点でもある。例えば同社では社内設計ポータルとAIを連携させることで「ネット情報と社内データから提案のベースとなる考え方を即座に抽出できるようにした」。これにより「人間が思考する時間を増やせるようになった」と実感している。
この大きな転換は、設計者が持つべき「仮説思考」を追求する上でも役立つ。歴史や文化、風土、時代性といった地域ごとの文脈を読み解きながら、社会の本質的な課題を自ら設定し、それに対して仮説を立て、設計を通して検証する。これを繰り返していく能力が設計者には必要だが、経験と高度な思考力が求められる。しかし、AIがそのような人間の暗黙知を再現できるようになれば、設計者が「さらなる創造力を発揮できる時間を生むようになる」とAIによる変革を歓迎する。
「変わり続けることが大切」。鉾岩社長の数々の思考はいずれも、時代とともに進化し続けている。「変化の過程で新しい目的が生まれる」。この言葉には、“これまでにない建築と都市をつくる”という強い覚悟がにじむ。
(おわり・斉木一宇、武内翔、本田征裕)
【業績メモ】
2025年度の業績は「非常に良い状況」。三つの大型病院の設計プロジェクトを受注できたことも大きい。この背景には「デザインレビュー」の仕組みがしっかり機能したことがある。さらに、同社の主要分野の一つである教育・研究関係の受注も「大変好調」だ。













