現場から・今に息づく「循環」の精神/DAIKENの岡山工場 | 建設通信新聞Digital

12月5日 金曜日

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現場から・今に息づく「循環」の精神/DAIKENの岡山工場

工場内部
遠藤執行役員
い草栽培が衰退しつつある中、畳表材の製造も行っている
【未利用資源を有効活用】

 今秋に80周年を迎えたDAIKEN。9月に社名変更、11月には音響特化型の研究開発拠点「音ラボ」を開所して、新たな会社の輪郭が表れ始めている。一方、近年の資源循環ニーズに合わせ、同社が長年培ってきた未利用資源を使ったエコ素材にも注目が集まっている。とりわけ木質廃材などを使った繊維板は、建築中の床養生材、畳の芯材や包装材などに広く使われる。こうしたエコ素材の製造を約70年続ける岡山工場(岡山市)には、同社の「循環」の精神が息づいている。 岡山駅から南に約10㎞。海岸方面に向かって幅の広い一本道が現れ、大型のトラックがゆっくりと行き交っている。磯の香りが強くなるころ、敷地面積25万㎡を超える巨大工場が姿を現す。
 工場で製造するのは壁材、天井材、木質ボード、畳表材の4品目。使うのはスラグ由来のロックウール、火山灰を使ったシラス、解体現場から回収した木材など、どれもが未利用資源だ。
 同社がこの地に拠点を構えたのは1958年。今では総合建材メーカーだが、当時はまだ設立14年目。干支(えと)が2周目に突入したばかりの若い会社だった。祖業の地、富山県で合板製造をなりわいとしていた。そんな同社が総合メーカーに成長する転機となったのが、直線距離で約400㎞離れた岡山県への進出だった。
 「社運を賭けたできごとだった」と当時を語るのは、エコ事業部を統括する遠藤稔執行役員。資本金が8000万円の時代に、投じた金額はその25倍に当たる20億円。合板事業で発生していた端材を活用し、インシュレーションボード(木質繊維板)を製造する。将来を見据えた一大勝負だった。
 当時主力の合板製造ではまず、丸太を回転させて薄くスライス。これを接着剤で重ねて合板ができる。ただ、製造工程で丸太の中心部は端材になる。現在は鉛筆ほどの細さになるまでスライスできるが、創業期の技術では、芯が大きく残っていた。
 「この木材を何とかもっと有効活用できないか」。富山の製造拠点では、試作品の研究チームが頭を悩ませていた。思案の末、たどり着いたのが木質繊維板のインシュレーションボードだった。
 巨額投資を経て、繊維板の製造が始まった。用途は床や壁の下地材として市場に広まる。用途範囲は当時、岡山の地場産業だった畳産業にも及び、70年代に芯材として使われはじめた。
 工場の製造品目は木質繊維板の「ダイケンボード」に加え、「ダイロートン」「ダイライト」と増え、90年代には、和紙を使った畳表材の製造も始めた。い草栽培が衰退しつつある中、日本の伝統文化を支えたいとの思いからだった。
 遠藤氏は「メーカーとして商品を通じて社会課題を解決したい」と話す。岡山工場の建設から、もうすぐ70年。「資源を有効活用できないか」という循環の精神は、DAIKENの新しい一歩を支え続けている。