【ルール化で産業利用進む/測量の仕事に変革/インフラ分野が市場けん引】
ドローンをはじめとする無人航空機を定義し、飛行にルールを設けた2015年成立の改正航空法の施行から、きょう10日で10年を迎える。早期に導入が進んだインフラ分野では、人の作業を代替するツールとしての利用にとどまらず、技術の進歩に合わせて新たな活用法が次々生まれている。インフラ分野に焦点を当て、施行後の10年間を振り返るとともに、ドローンの未来を展望する。 法施行4年前の11年9月、後に紀伊半島大水害と呼ばれる災害が起き、記録的豪雨で多数の土砂災害や天然ダムが生じた。被災状況を把握するため、発災直後に現地入りした国際航業は、東京スカイツリーに匹敵する高さの土砂が崩壊した様子を目の当たりにし、人の立ち入りによる調査を危険と判断。そこで試したのが、海外からいち早く仕入れて活用法を探っていたドローンだった。
当時の機体性能は現在と比べものにならないほど低く、飛行の安定性を失って何度も墜落させた。それでも、「立ち入り困難エリアを空から撮影できるのは非常に優位性がある」と島田徹フェローは確かな手応えを感じた。これが、測量や点検など業務全般でドローンを使い始めるエポックメイキングになったという。
現在は、空中写真をSfM解析して3次元点群モデルを作成する業務で主に利用している。低コストで手軽に飛ばせるため、有人航空機以外に手段がなかった空中写真撮影を「すごく簡単にできるようになった」。同社は、航空測量と地上測量の間を埋める三つ目の選択肢にドローン測量を位置付ける。
測量業界では、国土交通省が16年度開始のi-Constructionでドローン活用を打ち出し、工事測量に使われるようになって以降、徐々に導入が進んだ。さらに、周辺技術との融合でドローン利用が加速化したとし、「測量会社としては、LiDAR(レーザー式測距装置)の登場で自動計測が始まったことが大きい。小型化してドローンにも搭載できるようになり、測量の仕事が大きく変わった」と語る。
◆30年度市場規模1兆円
電子メディア「ドローンジャーナル」を運営するインプレス総合研究所の推計によると、ドローンビジネス市場の規模は24年度に4371億円で、前年度に比べて13.4%増えた。右肩上がりで伸びている。うちサービス市場は2295億円と、全体の5割超を占める。
サービス別は、点検が877億円で最も大きい。その後を農業(537億円)、測量を含む土木・建築(380億円)、その他サービス(256億円)、防犯(111億円)、空撮(94億円)、ドローンショー(20億円)、物流(同)が続く。インフラ分野がサービス市場のけん引役になっている。
河野大助ドローンジャーナル編集長は「点検で橋梁は大きな分野」と指摘する。国交省が道路橋定期点検要領を改定し、5年に1回の頻度で行う法定点検の効率化に向け、19年度開始の2巡目から点検支援技術にドローンを位置付けたことが背景にある。橋梁のほか、「送電網、基地局鉄塔、太陽光パネル、住宅屋根などの点検も実用化が進んでいる」と分析する。
30年度にはドローンビジネス市場が1兆円、サービス市場が5000億円をそれぞれ超えると予測しており、今後も成長が続く見通しだ。
市場急伸の転換点には、15年4月の首相官邸屋上へのドローン落下を契機とした法整備を挙げる。それまでは農薬散布や空撮で主に個人が利用していたが、飛行禁止空域、夜間・目視外飛行の扱い、許可・承認制度などが航空法に規定されたことによって「企業が導入しやすくなったのは間違いない」とし、ルール化によって産業利用が進んだと受け止める。
(次回から3面に掲載します)
ドローンをはじめとする無人航空機を定義し、飛行にルールを設けた2015年成立の改正航空法の施行から、きょう10日で10年を迎える。早期に導入が進んだインフラ分野では、人の作業を代替するツールとしての利用にとどまらず、技術の進歩に合わせて新たな活用法が次々生まれている。インフラ分野に焦点を当て、施行後の10年間を振り返るとともに、ドローンの未来を展望する。 法施行4年前の11年9月、後に紀伊半島大水害と呼ばれる災害が起き、記録的豪雨で多数の土砂災害や天然ダムが生じた。被災状況を把握するため、発災直後に現地入りした国際航業は、東京スカイツリーに匹敵する高さの土砂が崩壊した様子を目の当たりにし、人の立ち入りによる調査を危険と判断。そこで試したのが、海外からいち早く仕入れて活用法を探っていたドローンだった。
当時の機体性能は現在と比べものにならないほど低く、飛行の安定性を失って何度も墜落させた。それでも、「立ち入り困難エリアを空から撮影できるのは非常に優位性がある」と島田徹フェローは確かな手応えを感じた。これが、測量や点検など業務全般でドローンを使い始めるエポックメイキングになったという。
現在は、空中写真をSfM解析して3次元点群モデルを作成する業務で主に利用している。低コストで手軽に飛ばせるため、有人航空機以外に手段がなかった空中写真撮影を「すごく簡単にできるようになった」。同社は、航空測量と地上測量の間を埋める三つ目の選択肢にドローン測量を位置付ける。
測量業界では、国土交通省が16年度開始のi-Constructionでドローン活用を打ち出し、工事測量に使われるようになって以降、徐々に導入が進んだ。さらに、周辺技術との融合でドローン利用が加速化したとし、「測量会社としては、LiDAR(レーザー式測距装置)の登場で自動計測が始まったことが大きい。小型化してドローンにも搭載できるようになり、測量の仕事が大きく変わった」と語る。
◆30年度市場規模1兆円
電子メディア「ドローンジャーナル」を運営するインプレス総合研究所の推計によると、ドローンビジネス市場の規模は24年度に4371億円で、前年度に比べて13.4%増えた。右肩上がりで伸びている。うちサービス市場は2295億円と、全体の5割超を占める。
サービス別は、点検が877億円で最も大きい。その後を農業(537億円)、測量を含む土木・建築(380億円)、その他サービス(256億円)、防犯(111億円)、空撮(94億円)、ドローンショー(20億円)、物流(同)が続く。インフラ分野がサービス市場のけん引役になっている。
河野大助ドローンジャーナル編集長は「点検で橋梁は大きな分野」と指摘する。国交省が道路橋定期点検要領を改定し、5年に1回の頻度で行う法定点検の効率化に向け、19年度開始の2巡目から点検支援技術にドローンを位置付けたことが背景にある。橋梁のほか、「送電網、基地局鉄塔、太陽光パネル、住宅屋根などの点検も実用化が進んでいる」と分析する。
30年度にはドローンビジネス市場が1兆円、サービス市場が5000億円をそれぞれ超えると予測しており、今後も成長が続く見通しだ。
市場急伸の転換点には、15年4月の首相官邸屋上へのドローン落下を契機とした法整備を挙げる。それまでは農薬散布や空撮で主に個人が利用していたが、飛行禁止空域、夜間・目視外飛行の扱い、許可・承認制度などが航空法に規定されたことによって「企業が導入しやすくなったのは間違いない」とし、ルール化によって産業利用が進んだと受け止める。
(次回から3面に掲載します)











