【「×技術」で可能性無限/建設業で内製化の動き/作業ロボット化する未来】
空調衛生設備工事を手掛ける三建設備工業は、小型点検ドローンを現場に本格導入した。機体にLiDAR(レーザー式測距装置)を積み、ダクトが複雑に交錯する狭小空間の状況確認に使っている。
正確な図面は工事を進めるための必需品。ただ、それが手に入らない--。改修案件が増える中、新築時に携わっていない現場では、図面がないケースが少なくなかった。新しく図面を作成するため、地上式3Dスキャナーの情報を使って点群データを取得し、目視で情報を補足している。ただ、既存のやり方では全てのダクトを追い切れず、図面の精度に限界があった。
思案の末に導入したのが、小型点検ドローンだった。飛行時に収集した点群データと地上式LiDARの情報を融合。二つの情報を合成して3次元モデルをつくるハイブリッドスキャン技術を確立し、正確な現況把握ができるようになった。
「現場で使える」。技術統括本部の榊原正也次長は、機体を製造するリベラウェアと共同で行った実証実験で、ドローンの高い機動力、取得情報の多さを目の当たりにし、そう確信した。
試験場所は、高さのある機械室。「現地調査では、あんな高い場所に人は立ち入れない」。ドローンは地上から約15mの天井に入り込み、入り組んだ配管を器用に避けながら飛行した。取得データを地上のデータに合成すると、高精度の3次元モデルが短時間で出来上がった。
社内にノウハウをためようとドローンパイロットチームを立ち上げ、高所や危険箇所の調査・点検業務を内製化した。メンバー3人は必要な資格を取り、操縦訓練を経て、8月から実現場で活動している。
以前はダクトの細部が確認できず、点検口から体を入れてスケールを当てたり、隙間越しに撮影したりする方法しかなかった。その常識が覆った。ドローンが業務プロセスをアップデートしている。
◆電動化が普及要因
産業利用が進んだ要因には、航空法への規定によるルール化以外に何があるのか。
ドローンなど次世代移動体システム産業の振興に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(航空工学者、東大名誉教授)は、機体の電動化を最大の要因に挙げる。「リチウムイオンバッテリーの普及が大きい。内燃機関のエンジンを積んでガソリンを燃料とする機体が農薬散布や空撮に使われていた2000年代に、電動化は思いもよらなかった。電動で簡単に飛ばせて、操縦や取り扱いが容易になり、機体価格も大きく下がったことで、急速に広まった」
インフラ分野でのドローン利用の現状については「人が行けない場所や危険な箇所を調査するニーズが顕在化してきている」と評価し、能登半島地震や埼玉県八潮市の道路陥没事故が契機になったとの見方を示す。
インフラ分野は大きな可能性を秘めているとみる。「ドローンにホースを取り付けて外壁を洗浄したり、スプレーを噴射して塗装したりできるドローンが実用化されている。3Dプリンターを搭載し、飛行しながら建築する機体も出てきた。ロボットアームを取り付けて、より細かい作業を行えるドローンが登場する可能性は十分ある」。撮影やデータ取得を主体とする利用方法が“作業”へと本格的に広がることで、ドローンのロボット化が一層進みそうだ。
「ドローンは技術との組み合わせによって無限の可能性がある」「ドローンでできることはまだまだある」。先端技術との掛け合わせにより、まだ見ぬ新たな価値を創出できると、複数のドローン業界関係者は確信めいた表情で異口同音に語る。
(柿元瞬、綾部康一)
空調衛生設備工事を手掛ける三建設備工業は、小型点検ドローンを現場に本格導入した。機体にLiDAR(レーザー式測距装置)を積み、ダクトが複雑に交錯する狭小空間の状況確認に使っている。
正確な図面は工事を進めるための必需品。ただ、それが手に入らない--。改修案件が増える中、新築時に携わっていない現場では、図面がないケースが少なくなかった。新しく図面を作成するため、地上式3Dスキャナーの情報を使って点群データを取得し、目視で情報を補足している。ただ、既存のやり方では全てのダクトを追い切れず、図面の精度に限界があった。
思案の末に導入したのが、小型点検ドローンだった。飛行時に収集した点群データと地上式LiDARの情報を融合。二つの情報を合成して3次元モデルをつくるハイブリッドスキャン技術を確立し、正確な現況把握ができるようになった。
「現場で使える」。技術統括本部の榊原正也次長は、機体を製造するリベラウェアと共同で行った実証実験で、ドローンの高い機動力、取得情報の多さを目の当たりにし、そう確信した。
試験場所は、高さのある機械室。「現地調査では、あんな高い場所に人は立ち入れない」。ドローンは地上から約15mの天井に入り込み、入り組んだ配管を器用に避けながら飛行した。取得データを地上のデータに合成すると、高精度の3次元モデルが短時間で出来上がった。
社内にノウハウをためようとドローンパイロットチームを立ち上げ、高所や危険箇所の調査・点検業務を内製化した。メンバー3人は必要な資格を取り、操縦訓練を経て、8月から実現場で活動している。
以前はダクトの細部が確認できず、点検口から体を入れてスケールを当てたり、隙間越しに撮影したりする方法しかなかった。その常識が覆った。ドローンが業務プロセスをアップデートしている。
◆電動化が普及要因
産業利用が進んだ要因には、航空法への規定によるルール化以外に何があるのか。
ドローンなど次世代移動体システム産業の振興に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(航空工学者、東大名誉教授)は、機体の電動化を最大の要因に挙げる。「リチウムイオンバッテリーの普及が大きい。内燃機関のエンジンを積んでガソリンを燃料とする機体が農薬散布や空撮に使われていた2000年代に、電動化は思いもよらなかった。電動で簡単に飛ばせて、操縦や取り扱いが容易になり、機体価格も大きく下がったことで、急速に広まった」
インフラ分野でのドローン利用の現状については「人が行けない場所や危険な箇所を調査するニーズが顕在化してきている」と評価し、能登半島地震や埼玉県八潮市の道路陥没事故が契機になったとの見方を示す。
インフラ分野は大きな可能性を秘めているとみる。「ドローンにホースを取り付けて外壁を洗浄したり、スプレーを噴射して塗装したりできるドローンが実用化されている。3Dプリンターを搭載し、飛行しながら建築する機体も出てきた。ロボットアームを取り付けて、より細かい作業を行えるドローンが登場する可能性は十分ある」。撮影やデータ取得を主体とする利用方法が“作業”へと本格的に広がることで、ドローンのロボット化が一層進みそうだ。
「ドローンは技術との組み合わせによって無限の可能性がある」「ドローンでできることはまだまだある」。先端技術との掛け合わせにより、まだ見ぬ新たな価値を創出できると、複数のドローン業界関係者は確信めいた表情で異口同音に語る。
(柿元瞬、綾部康一)











