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現場から・オリエンタル白石・つくばテックファーム/地下を丸ごと地上に再現

掲載日 | 2026/05/08 3面

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【実物大だから技術継承、実験に有用】

 地上から地下工事を体感できる--。オリエンタル白石が手がける実証拠点「つくばテックファーム」(茨城県つくば市)は、そんな異色の施設だ。2021年の開設から4月で5年が経過。現場を丸ごと再現した空間で、“お家芸”のニューマチックケーソン(潜函)工法が進化を続けている。

 「ここで多くの実証実験を行ってきた。潜函工の育成にもつながっている。成果は出ている」。倉知禎直技術本部技師長はそう言い切る。
 敷地内には、実際の工事と同じスケールの機材が並ぶ。あたかも地下現場を輪切りにしたような構造で、掘削工程を手に取るように確認できるのが特長だ。人や土砂が行き交うシャフト、掘削を担うショベル、排土設備。実機を動かし「ケーソンの各段階の作業を何でも体験できる」環境を整えた。
 施設建設に踏み切った背景には、担い手不足がある。需要自体は堅調なニューマチックケーソン工法。ただ、それを担う若者は徐々に減少、とりわけ協力会社では人材不足が恒常化していた。複雑な地下工事のノウハウをどう伝えればよいか。現場で働くベテランの悩みは増していた。
 こうした声に応えて誕生した“地上の地下施設”の反響は大きかった。今では実務教育に加え、官公庁や取り引き先、学校向けにも施設を公開、年間50件以上の見学会が催され「毎週稼働している」状況だという。

【底堅い国内の需要/研究開発に十数億】

 同社はプレストレスト・コンクリート橋梁と地下工事を柱とするが、とりわけニューマチックケーソン工法は競争力の源泉の1つだ。掘削土量ベースで国内シェアは6割超。大型地下構造物を数多く手がけてきた。
 ニューマチックケーソン工法は、底の開いた箱状の作業室の中で掘削を進める。地上とは長いシャフトでつながり、作業員や土砂が行き来する。掘削面を直接確認できるため、地質の変化に柔軟に対応でき、施工精度の高さに定評がある。
 一方で、作業に当たるスタッフの数は減り続けている。作業室には地上から空気が圧送される。高圧環境下での作業という特性上、作業に当たる潜函工の負担は大きい。担い手の確保や安全性向上が長年の課題だった。
 こうした一長一短を背景に、工法発祥の欧州では主流工法から外れた。対して地震が多く、耐震性に優れ基礎構造に高い精度が求められる日本では独自に進化。近年は遠隔操作技術の進展で、掘削作業の大半が地上からの操作で行えるようになり、現場の作業環境が変わりつつある。
 現在、国内での需要は底堅い。同社の分析では、市場規模は30年度まで、掘削土量は年間約15万立方メートルで推移する見通しだという。防災・減災への関心の高まりを背景に、高精度な地下構造物のニーズは根強い。
 こうした流れを技術面で支えるのがテックファームだ。これまでにハード面では約2億3000万円、研究開発を含めると十数億円を投じ、機能を拡張してきた。25年には排土作業の自動化に向けたクレーン設備を導入、26年には作業室内に小型ショベルを新設した。現場の省人化を見据えた検証が続く。
 決して小さくない投資だが、「うまく運用すれば十分に回収できる」と倉知氏は言う。「実機を動かさなければ研究開発にはつながらない」
 省人化や遠隔操作が進む一方で、新たな課題の解決にも取り組んでいる。地下という特殊環境では、機械は一度故障すれば簡単には修理できない。同社が見据える現場の完全無人化が進むほど、そうしたリスクは一段と高まる。今後はAI(人工知能)を活用し、故障の予兆を事前に捉える仕組みの構築も視野に入れる。
 足元の底の底で、生活を支える地下工事。技術を支える“もう一つの現場”が静かに存在感を高めている。

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