とあるイベントで、曲間をつなぐトークの代わりにAI(人工知能)が作った歌が流れるという一幕があった。指定のキーワードを盛り込んだ歌詞には拙さが残るものの、軽快なリズムを刻むそのポップスは悔しいがなかなかの佳作である◆人間とAIの関係性を語る上で表現・創作というテーマは避けて通れない。演出家の野田秀樹氏は、東京大学入学式に寄せた祝辞で「創作や学問に喜びを感じるのは、それを感じる『有限の身体』があるからだ」と語った。愛や苦悩を知識として理解できても、肉体を持たぬAIにその「心」は分からないと◆この仕事にも同じことが言えるか。業界の葛藤、建造物やつないだ歴史への思いに心を寄せてこそ良い表現ができるはずだ◆なればこそ、人間ができる、人間にしかできない仕事に心を砕かねば。
