神奈川県鉄筋業協同組合の工藤桂一理事長は、ゼネコンへの標準見積書の提出を促し、日本版の“ブルーカラービリオネア”の実現を提唱した。標準見積書がゼネコンとのコミュニケーションツールになると説き、「ゼネコンと膝を突き合わせて、鉄筋工事業界、建設業界の将来を話し合いながら、ゼネコンだけが最高益を出すような一人勝ちの状況ではなく、その原資がわれわれにも来て、それが職人に支払われ、この業界に入りたいという人たちが増えていくという好循環を一緒につくっていこう」と呼び掛けた。
26日に開かれた通常総会のあいさつで言及した。ブルーカラービリオネアは、AI(人工知能)の進展に伴い、ホワイトカラーの一部がAIに仕事を奪われる一方、AIによる代替が難しい手に職を持つブルーカラーの価値が見直され、高収入を得るという米国で起こっている現象。日本で実現すれば、建設業界を取り巻く環境は大きく好転するが、その道のりは険しい。
「今年は、全体的にゼネコンの抱える案件の多くが仕上げの段階で、われわれの仕事は少ない」。複数の鉄筋・型枠工事業者は異口同音に頭を抱える。
昨年12月に第3次担い手3法が全面施行され、技能者の処遇改善に向けて追い風が吹いているものの、工藤理事長は「足元の仕事量はなかなか厳しく、私たちが立っている場所には向かい風が吹いている。来年以降、関東地方は景気が良くなり、建物が大量に建つという話もあるが、中東情勢などの影響で建設資材が入らなくなっている。(好景気が)現実のものとなるかどうかは、ふたを開けてみなければ分からない」とこぼす。
このような状況下で、実勢価格の倍以上になる標準見積書の提出はハードルが高く、仕事を取るために価格競争を余儀なくされているのが現状だ。
工藤理事長は「標準見積書を出すか出さないかは私たちにかかっている。出したら仕事をもらえないかもしれない。でも出さなければ単価は一切上がらない」とジレンマを口にしながら、「まずは出してみる。その金額で取り決めができるかどうかは分からないが、コミュニケーションを取る一つのきっかけになる」と組合員を鼓舞する。
組合としても、ただ手をこまねくのではなく、組合員を手助けしていく構えで、工藤理事長は「(組合員が)取引先に言いづらければ、取引関係のない理事がゼネコンに説明に伺い、単価アップの力添えをしていきたい」と組合一丸となって取り組んでいく姿勢を示す。
サプライチェーン全体での価格転嫁を実現するためには、下請け側による標準見積書の作成・提出、そして中堅・中小を含めた元請け側の標準見積書に対する理解が不可欠だ。
日本建設業連合会の押味至一会長は11日に開かれた定時総会・理事会後の会見で、「担い手確保のためには、技能者の処遇改善を第一に考えていかなければならない」と強調した。日建連は、昨年7月に公表した建設業の新長期ビジョンで、技能者の異次元の処遇改善を掲げ、年平均7%以上の持続的な賃上げによる所得倍増や、現状の約2倍の水準に当たる40代平均年収1000万円超の実現などを目指している。
