【運営方針は?/社内外の技術融合で価値創造】
戸田建設のイノベーション本部長に中原理揮執行役員副社長が就いた。入社以来33年間、一貫して構造設計に携わり、「顧客にとって魅力ある建物を、いかに安全・安心に提供するか」を信条に技術者として歩んできた。技術開発統轄部とイノベーション推進統轄部という性格の異なる二つの組織を束ねながら、同社が目指す“突出価値”の創出にどう挑むのか。イノベーション本部の運営方針と今後の技術戦略を聞いた。
--抱負は
「私の任務は、自社技術を深掘りする技術開発統轄部と、社外技術を探索するイノベーション推進統轄部を融合させることにある。この『両利きの展開』を一体化させ、現場の活動を後押しする『弾み車』となって、お客さまの期待を超える突出価値を社会に提供していく。さらに『建築・土木の技術戦略』『創新』『環境』『知財』の4戦略を加え、経営方針と連動した強固な体制を構築していきたい」
--構造設計での現場経験をどう生かすのか
「ビジネスの最前線で顧客の考えを肌で感じてきた経験は、技術開発の実効性を高める上で大きい。研究開発はどうしても現場から一歩引いたプロダクトアウトに陥りがちだが、私は顧客ニーズを起点とした『マーケットイン』への転換を重視している。また、市場トレンドと技術を統合したMOT(技術経営)視点の導入を推進したい。研究者が初期段階から実用化まで責任を持って担当することで、真に求められる技術を適正にフィッティングさせていく」
--注力する技術分野は 「生産性向上は避けて通れない課題であり、フィジカルAI(人工知能)やロボットに注目している。建設現場は複雑で単純なパターン化が難しいため、自律的に判断して現場に適合する能力が不可欠だ。一方で、当社を象徴する突出価値の創出にも力を入れる。例えば、地球環境大賞の大賞を受賞した浮体式洋上風力発電技術や、日本国内のみならず世界的な賞を受賞した実績を持つコアウォール免震構造の技術は、当社の高い技術力を象徴する事例であり、未来を切り開く重要技術だ。こうした環境技術や地震大国である日本における安全・安心への備えは、ゼネコンが応えるべき重要な社会的要請だと考えている」
--スタートアップ(新興企業)などとの外部連携は
「スピード感の違う組織同士、われわれが開発したいパズルのうち、足りないピースをリサーチしてはめ込んでいくような、互いの強みを生かす共創を目指している。自社開発だけにこだわらず、他社とのエコシステム形成も含め、フレキシブルに幅広い戦略を推進する。将来は見通せないなりに想定を重ね、1年ごとにマイルストーンを柔軟に見直しながら、パートナーとともに『顧客への価値提供』という揺るぎないゴールを目指していく」
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(なかはら・まさき)1989年3月横浜国立大大学院工学研究科計画建設学修了後、同年4月戸田建設入社。2016年3月建築設計統轄部構造設計部長、22年4月常務執行役員技術開発統轄部長兼建築設計統轄部副統轄部長、23年3月常務執行役員イノベーション本部技術開発統轄部長などを経て、26年4月から現職。座右の銘は「理想を掲げた現実主義者」。趣味はジョギング。「自分をアピールするのは苦手」と謙遜しながらも、異なる文化を持つ人々との出会いで生まれる“化学反応”を誰よりも楽しみにしている。神奈川県出身。65年2月9日生まれ、61歳。
