【技術職員の役割広く周知】
国や地方自治体などの公務員技術者約5万4000人で構成する全日本建設技術協会の新会長に前川秀和氏が就任した。公務員技術者の確保という目下の課題に向き合いながら、設立当初から取り組んでいる社会的地位向上に邁進する。理想の技術者像について「世の中の動向や最新技術に常に敏感で、生涯勉強を続けること」と語る前川氏にこれからの協会の方針を聞いた。
--就任の抱負を
「当協会は、1946年に発足し今年で80周年を迎える。戦後の混乱期に技術者の社会的地位の向上を目指し国や地方が一緒となって運動を始めた原点を大切にしながら運営していきたい」
--協会の事業計画で特に重点的に取り組むことは
「会員の技術水準を引き上げるため、毎年全国10カ所で開催している建設技術講習会に引き続き精力的に取り組む。また、機関誌『建設』の発行でも会員の声を吸い上げ関心が高い話題を特集していく。協会の特徴は分野が広いこと。道路や河川だけでなく、建築や港湾、漁港もある。自分が担当している分野では最新の動向を知っていても他の分野の情報は意外と入ってこないものだ。建設業の幅広い分野を網羅していることがこの機関誌の強みだ」
--社会的地位向上のためにどう動くか
「それぞれの組織で専門性を持った技術者がいなければ対応できない事柄が多くあることを訴えていくことが一番だ。例えば、単に災害対応といっても避難所を運営するだけではなく、事前防災の観点でどこの部分のインフラをどのように手当てすべきか判断する人が必要だ。老朽化対策も同様。これから50年以上経つ施設がさらに増えていく中で優先順位をつけて措置するには専門的な知識が欠かせない。そういったことを地道に伝えていくことが結果的に近道となる」
--公務員技術者の確保も課題だ
「建設業界は人手不足で人材獲得の競争が激しくなっているが、公務員としての責任感ややりがいを重視する人は一定数いる。いずれは自分の生まれた地域に貢献したいと考える人もいるだろう。新卒者に限らず中途採用を含め、幅広く人材を確保し活躍できる環境を整えていかなければならない」
--これからの公務員技術者はどうあるべきか
「工事受注者やコンサルの技術力は向上しており、今後は民間に任せられる分は任せていくことになるだろう。その意味では発注者に求められる能力も変わってきている。中長期的なプランを策定する能力や全体をマネジメントする能力が必要となるだろう」
「受注者と発注者には上下はなく、パートナー同士の関係だ。地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)やPPP/PFIの取り組みが広がる中で、発注者は民間の力を引き出すことが大きな役割となる。同じ技術者として信頼関係を築くことが大事だ」
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(まえかわ・ひでかず)1977年3月東大工学部土木工学科卒後、同年4月建設省(現国土交通省)入省。北陸地方整備局長や道路局長を歴任し13年8月に退官。建設コンサルタンツ協会副会長兼専務理事やNEXCO西日本社長などを経て6月26日から現職。金沢市出身、71歳。
■記者の目
部下にさまざまな仕事を任せる包容力があり、周囲からの信頼が厚い。国交省官房技術調査課長の頃に受けた印象だ。今も変わらぬその姿勢について、「もともとアバウトな人間で、自分に能力があると思っていない。優秀な人に任せた方が良いから」と本人は説明する。だが、道路公団民営化、ダンピング対応、笹子トンネル崩落事故など数々の困難な状況を乗り切ってきたのは、包容力とともに本質を見極める目があるからこそ。公務員技術者の減少という難しい課題にも懐深く対応することが期待される。
