【新たなフェーズの方針は?/バリューチェーン拡大と再エネ強化】
熊谷組の新事業開発本部は、これまでに種まきしてきた事業で収益を生みつつ、新たな事業を模索するフェーズに入った。清水直博執行役員新事業開発本部長は、「これまでの取り組みを継承しつつ、バリューチェーンの拡大、再生可能エネルギー分野の強化を一層加速させる」と力を込める。長期的な視点で企業成長を支える新たな柱を育てるため、「社会的なニーズをいかにキャッチアップするかが今まで以上に大切だと強く感じる」と語る清水本部長に、今後の方針を聞いた。
--今後の方針は
「本業である建設事業の強みを生かして新規事業を展開する。前に進んでいく気持ちを大切にしつつ、建設事業を軸に、『なぜこの事業が熊谷組に必要なのか』を考え、各部署との横の連携を活用しながら、全社を巻き込んで施策を実行するのが役割だ」
--部署の特徴は
「当本部はインフラ事業推進部、新事業企画推進部、再生可能エネルギー推進部の3部で構成し、50人弱のメンバーのうち半分近くがキャリア採用だ。洋上風力発電、電気事業など、それぞれの分野の即戦力を揃えている」
--再エネ分野の状況は
「カーボンニュートラルの実現に向け、再エネを自社でどれだけ確保できるかを考えて取り組んできた。太陽光や小水力発電などは、電力事業者への進出も視野に入れる」
「脱炭素バイオマス燃料であるブラックバークペレットの製造工場が愛媛県で竣工し、10月の商業運転開始を目指している。木材加工時に発生するバーク(木の皮)を原料とした木質ペレットを製造し、炭化装置で熱処理するCO2排出量の削減に貢献する技術だ。独自性がある燃料として展開する」
--洋上風力発電事業は
「短中期的なターゲットは再エネ海域利用法に基づく着床式の施工で、長期的には浮体式にも対応したい。洋上風力施工船舶の保有などを目的とした会社『Jack-up Wind Farm Construction(JWFC)』を当社を含むゼネコン6社で設立しており、施工案件の見積もり依頼が来るようになった。浮体式についても、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金に採択され、実証実験を実施した」
「海外では、ベトナムで現地のパートナーとともに事業化を目指しており、着床式施工のノウハウを積む」
--インフラ分野での事業領域拡大は
「インフラ事業推進部では、PFIやPPP、コンセッション(運営権付与)方式の取り組みを強化する。PFIは、代表企業としてマネジメントしながら建設を手掛けたい。当社だけでなく、建築リニューアル事業を手掛けるケーアンドイーや道路舗装事業を展開するガイアートといったグループ会社が一体となり、事業全体をマネジメントする」
--数値目標は
「中期経営計画では、2036年3月期の連結経常利益500億円を掲げている。周辺事業は130億円を目指す。そのうちPFI、ブラックバークペレットの製造・販売、再エネといった新規事業は、30、40億円規模の収益を確保したい」
--新たな事業領域は
「社員からアイデアを募って、新事業を推進する『新事業創出プロジェクト』を通じて、微細藻類培養とアクアポニックスを掛け合わせた環境保全型ハイブリッド農業を事業化した。社内で新事業に取り組む機運を醸成することが重要であり、同プロジェクトをまた実施したい」
--M&A(企業の合併・買収)についての考えは
「投資戦略の基本方針『土地の取得、設計、建設、維持管理運営、建て替えを含むバリューチェーンの拡大』を念頭に置いて考えていく」
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(しみず・なおひろ)1991年3月関西大工学部土木工学科卒後、同年4月熊谷組入社。2018年4月首都圏支店土木事業部長、19年4月首都圏支店次長、21年4月経営戦略室長、24年4月執行役員経営戦略本部長を経て、26年4月から現職。57歳。
