【「子どもたちの憧れ」の一助に】
「建設業が、子どもたちに憧れられる産業になるための一助となりたい」。6月に建設業適正取引推進機構の理事長に就任した木下茂氏は、コンプライアンス(法令順守)の徹底やガバナンスの強化を後押しする講習会の開催などを通じて、業界全体のイメージアップと、その先にある将来の担い手確保に貢献したいと意欲を示す。民を挙げた長年の取り組みにより、建設業の処遇改善や働き方改革は着々と進展している。しかし、全ての事業活動の土台とも言える法令順守がいったん揺らぐと、これまでの多くの努力や成果が霧散しかねない。今後の方針などを聞いた。
--就任の抱負は
「今回の熊本地震でもそうだが、がれき処理や道路啓開、これからの復旧・復興でも、実際に手を動かして現場で活躍するのは建設産業の方々だ。被害が起きなかったところも、事前防災の取り組みが生きていると言える。国民生活と経済活動を支える建設業、建設関連業の重要性は改めて言うまでもないが、われわれとしても引き続き、建設業取引に関する法令順守と公正で自由な競争秩序の確立などを推進し、業界の発展と国民生活の向上の役に立ちたい」
--組織運営の基本方針は
「度重なる不祥事を受けて、当機構は1992年に設立された。残念ながら、それから30数年がたっているにも関わらず、いまだに法令違反の事案は絶えない。企業、団体、そして発注者も対象に、独禁法や建設業法、官製談合防止法などに対する理解促進を図るとともに、単なる法令順守にとどまらない一層の意識向上を後押ししていきたい」
「当機構は監督処分などを行っているわけではないが、この名称のためか、敷居が高いと感じるという話しも聞く。われわれは敷居の低い相談相手であり、より幅広い方々に気軽に利用してほしい。機構としても、そのためのPR活動を強化していきたい」
--重点事項は
「昨年末に第3次担い手3法が全面施行された。われわれも講習テキストを全面改定したが、法改正の趣旨と内容の関係者への浸透を図ることが、大事なミッションだと思っている。それによって、技能労働者の処遇改善や建設現場の働き方改革を下支えすることで、業界全体の担い手確保や生産性向上に貢献したい」
「特に、標準労務費の導入は画期的な取り組みだと考えている。適正な労務費の確保と確実な行き渡りについて、講習会でも重点を置いて説明し、周知・啓発に努めたい」
--今後の事業展開について
「業界のイメージアップに注力したい。そのためには、社会一般に受け入れられる行動を徹底する必要がある。業界全体でいくら成果を積み上げても、一部で不祥事や不正行為が発覚すると、全体のイメージは容易に失墜してしまう。保護者も学校の先生も、イメージの悪い業界に子どもたちを入れたいとは思わない。処遇改善や働き方改革と同時に、法令順守を一層浸透させ、新4Kで言う『かっこいい』業界を目指したい」
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(きのした・ しげる)1984年3月東大経済学部卒後、同年4月建設省(現国土交通省)入省。2013年8月国交省国土政策局総務課長、14年6月首都高速道路会社執行役員、16年7月内閣府官房審議官などを経て17年8月に退官。同年11月建設経済研究所特別研究理事、22年6月専務理事、26年6月から現職。愛知県出身、64歳。
■記者の目
「自分の基軸をしっかりと持ち、何をするにしても自分に恥ずかしくないように」という自身の行動指針は、まさに、インタビュー中に何度も口にした法令順守に通底するものがある。「機構の存在はまだまだ業界内で十分に認知されていない」と課題を直視し、「体を動かすことが好き」というフットワークの軽さを生かして各方面への情報発信にも力を注ぐ。
