【好調の要因と今後の展望は?/水平展開力で組織拡大】
フィールド・デザイン・アーキテクツ(東京都中央区)は、建築の企画や設計などを手掛け、好調な業績を背景に組織拡大に取り組んでいる。平均年齢31歳の若き組織をけん引する井上雅宏代表取締役は、これまでの経歴を生かし、アトリエとラージファームの長所をミックスした「これからの設計事務所」が目標だと語る。今後、主戦場の集合住宅やホテルなどに加え、公共建築をはじめとした幅広いジャンルへの挑戦、現行の倍ほどの50人規模の組織体制などを思い描く井上氏に、今後の展望を聞いた。
--現状の経営認識を
「2025年度の売り上げは4億2000万円、26年度は6億円に到達する見込みとなっており、年々より魅力的な案件を受注できている。民間の依頼が絶えない中、将来を見据え、公共の入札やプロポーザルなど多様な分野にも挑戦することが重要だ。組織の拡大と並行して、50人で12億円規模の売り上げを目指す」
--会社の強みは
「一番の持ち味は水平展開力だ。ノウハウを含め、常に各案件の情報を開示するよう社員に働き掛けオープンな風土づくりに取り組んでいる」
「抱えるプロジェクトが多い中では、体制構築が社員の士気を支える。役職にとらわれず意見交換できる風土は、私が伊東豊雄建築設計事務所に勤務していた時に接したフルフラットな組織体制をリスペクトした結果でもある。回転を高め、ノウハウを蓄積しながら新たなプロジェクトを受注する好循環を生み出すため、縦割りではない組織体制の効率化、設計過程でのDR(デザインレビュー)の細分化などを進めている。フラットな交流を生む社内行事も多い」
「狭小敷地での高容積ビル群など、都心部の中高層案件では法規がパズルのように集密化する。建築法規を深く理解し、法制度を逆手に取って事業性を最大化させられる点が最大の特徴と考えている」
--人材育成や組織づくりの方針は
「組織事務所のスタイルを採用し、BIMやCADのスペシャリストとその他のゼネラリストとを明確に分け、効率的かつ高いパフォーマンスにつなげている」
「30代の前半で1000万円、コアスタッフは2000万円を目指せるような給与体系としている。給与面の充実や残業の抑制は、厳選されたスタッフが建築の見聞を広める機会創出につながる。必要な設備は誰もが個人判断で購入できるようにしており、銀座・六本木で進む10以上のプロジェクトが高い顧客満足度を得ているのは、思い切った社員ファースト姿勢によるものではないだろうか」
--今後の展望は
「先日、伊東豊雄氏が手掛けた『みんなの家』を訪れる機会があった。地元の人たちの生き生きした姿を目の当たりにし、批評的な建築の世界へ恐れずに展開していかなければならないと気付かされた。志を持つ若手社員の思いも受け止め、さらなる目標に向かって進んでいく」
「そのためにも組織体制の構築が肝となる。増員に向けては社員が関わり合い、信頼関係と新たな価値観を築いていける形を模索する。確認体制や技術の集積は組織的なツリー構造とし、アイデアや情報は(神経細胞同士をつなぐ)“シナプス”のように連携して、常にセレンディピティ(思いがけない発見)が生まれる組織構造を整えたい」
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(いのうえ・まさひろ)1996年3月早大建築学科修士課程修了後、同年伊東豊雄建築設計事務所入所。タウン企画設計、現代建築研究所を経て、2009年にフィールド・デザイン・アーキテクツ一級建築士事務所を設立し、12年に株式会社へ改組。東京都出身、54歳。
