【これからのまちづくりのキーワードは?/都市に価値与える「遊」】
都市再生機構(UR)の新たな理事・西日本支社長に倉上卓也氏が就任した。30年近くにわたり進められてきた「うめきた」(大阪駅北地区)の開発にめどがつき、関西の都市再生が新たなフェーズを迎えようとする中、URにも時代の変化に応じた役割が求められている。「遊(ゆう)」をキーワードに、新たな価値を与えるまちづくりに取り組みたいと話す倉上氏に、西日本支社の取り組みなどについて聞いた。
--抱負を
「西日本支社は、UR賃貸住宅事業の約4分の1を担う一大事業所だ。やりがいを感じると同時に重責も感じている」
--都市再生事業で目指すことは
「都市再生部門ではうめきたや三宮地区など大規模再開発を手掛けている。うめきた公園は27年春ごろの全体開園に先駆け、11月に公園北側の「うめきたの森」の大部分がオープンする。世界に類のない都心の緑を実現したうめきた公園の誕生で、大阪の都市イメージは大きく変わったといっても過言ではない。私たちがこの事業の一翼を担ったことは誇るべき成果であり、これからもこうしたまちの価値向上に貢献していきたい」
「大阪市の都市軸は、これまでの『南』『北』に加え、『東』『西』の動きも活発だ。このうち『東』である大阪城東部地区にはUR団地のある森ノ宮地区が含まれており、次世代のまちづくりに向けた取り組みを目指していきたい」
--賃貸住宅事業について
「大きく二つの課題に直面している。一つは賃料の在り方に関すること。昨今の物価上昇を考慮しても、首都圏と比べて関西圏の賃料上昇は緩やかだ。今後はこうした賃料の在り方について考えていかなくてはならない」
「もう一つが、UR団地を巡る建物の老朽化と団地住民の高齢化だ。西日本支社管内だけで管理している約20万戸弱の住宅のうち約13万戸は昭和40年代から50年代に建設された団地となっている。状況に応じ『建替え』『集約』などの四つの手法に分けて事業を進めているが、団地再生に関しては千里ニュータウンの団地の建て替えが今年度から本格化する。工事費が高騰している中での発注になるため、柔軟に取り組んでいく」
--事業で重視することは
「まちづくりはそもそも息の長い仕事。転換期を迎える中で、これまでの延長線上だけで捉えてはならない。全国各地のまちづくりで求められていることの一つが『回遊性』だ。まちの動線を効率的につくっていくのではなく、付加価値を与える観点で考える。空間をつくる上で従来の効率性一辺倒ではなく『豊かさ』や『ゆとり』が感じられることが重視されるようになった。その意味で遊(ゆう、あそび)がこれからのキーワードになるのではと考えている」
--関西のまちについて思うこと
「西日本支社の勤務は私にとって今回が初めてとなる。普段、関東のまちで生活していると歴史や文化と直接的なつながりを感じることはあまりない。だが大阪に来て天神橋筋商店街を歩いている時、街ゆく人が天満宮の前で自然に頭を下げている風景を目の当たりにして、長い時間をかけて形成されてきたまちだということを今更ながら実感した」
「一方でURの歴史はたかだか70年に過ぎない。私たちがなすべきことは何かを常に意識しつつ、歴史の一コマに残るようなまちづくりに貢献できれば無上の喜びだ」
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(くらかみ・たくや)1989年3月学習院大法学部卒後、91年12月住宅・都市整備公団(現都市再生機構)入社。2020年4月本社住宅経営部長、22年7月東日本賃貸住宅本部長、24年7月本社統括役を経て7月1日から現職。学生時代は自動車部所属。今も乗り物全般は好きで「昆虫観察も大好き」。「悪さ加減の選択」を心に留めて仕事に臨む。理想に対し直線的にアプローチするのではなく問題点が少ないと思われる「より悪くない選択」をなるべく選ぶようにしている。埼玉県出身、60歳。
