清水建設は、建物の免震性能を付加的に高める対策技術「S-TOPダンパー」を開発した。大振幅地震(揺れの幅が極めて大きい地震)に弱いという免震建物の弱点を短工期・低コストでカバーし、新築だけでなく、全国に6000棟程度あるとされる既存免震建物にも後付けできる強みを持つ。年数百棟への導入を目標に、自社が設計・施工を手掛けた既存建物を中心に建物所有者への提案を進める。
2016年熊本地震を受けて開発に着手した技術で、免震層の上・下階の躯体に取り付けた鋼製支承を長さ約5mの棒鋼製ダンパーで連結するシンプルな機構が特徴の一つだ。ポイントは、地震の揺れによって建物が免震層側壁と衝突しないように確保しておく免震クリアランスと同等の役割を果たす余長(ギャップ)部を棒鋼に設けた点にある。
発生頻度の高い中小地震や、設計時に想定した大地震が起きた際は、余長部が管状部材の中を動き、棒鋼に力が作用しない。他方で大振幅地震によって建物の揺れ幅が免震クリアランスに迫ると、初めて棒鋼に力が作用し、耐性と耐力を付加して過大な変形を抑え込む仕組み。
引張力にのみ抵抗する「引張タイプ」と、引張力と圧縮力の両方に抵抗してエネルギー吸収量がより大きい「引張・圧縮タイプ」の二つを用意した。ターゲットとする地震動の特性に応じて選択できる。引張力と圧縮力の両方に効く技術は他社にないという。導入に当たって免震装置のメーカーは問わない。
大振幅地震対策としては、「免震クリアランスを広げる」「オイルダンパーを増設する」の主に二つがあった。ただ、前者は既存建物に適用できず、新築でも敷地条件や経済性の面で難がある。後者は、中小地震の免震効果が低下するほか、免震性能が変わることで大臣認定と建築確認を改めて取得する必要が生じる。
S-TOPダンパーはこうした問題をクリアできる。普段の免震性能は一切変わらないため、大臣認定などの再取得が不要だ。オイルダンパー増設の対策に比べ、コストを半分以下に抑えられ、工期は3カ月程度短縮できる。
実証試験により、大地震以下の領域で棒鋼に力が作用せず、大振幅地震動の領域では一般的な免震用オイルダンパーの約2倍の反力を発揮することを確認している。
実物件で既に採用され、27年末の完成を目指して施工を進めている第一三共の品川研究開発センター研究棟に引張・圧縮タイプを設置。このほか4件が決まっている。他社が設計・施工した物件への導入も見据えながら、まずは官庁施設や病院などに対して積極的に提案していく考えだ。
