【「森ビルらしさ」を追求】
森ビルの社長に向後康弘氏が就任して間もなく4カ月になる。入社直後から足かけ24年間にわたり六本木ヒルズの開発や運営に携わってきた中で、上司であった●(辻のしんにょうの点が一つ)慎吾前社長(現取締役会長)から学んだ『べき論』の継承を掲げる。一方で、東京の国際競争力をさらに高めなければ「日本経済に未来はないのではないか」と危機感を募らせる向後氏に、今後の事業戦略を聞いた。
--就任の抱負は
「虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズが軌道に乗り、新しい地平にいる今、次に何をするかが課題だ。森ビルが育んできた都市づくりの思想や姿勢をしっかり受け継ぎ、将来に向けてさらに成長させていかなければならない。都市にまっすぐ向き合い、真にあるべきものを問い続ける『森ビルらしさ』を追求する。その中で導き出した答えを形にし、世の中に示していきたい」
--個別案件の展望は
「六本木五丁目西地区は、2棟の超高層棟を含めた複数の建物の足元を人工地盤で覆い、その上に約1.6haの『都心の森』を整備する。オフィス、住宅、商業施設、ホテル、文化施設などを集積し、これまでにない都市景観と施設構成を実現できるのではないか。六本木から麻布台、虎ノ門にかけての一体性もさらに高めていく」
「虎ノ門3丁目計画では、2025年に準備組合を立ち上げ、基本計画を取りまとめた。これから具体的な中身を協議していく段階だが、虎ノ門ヒルズのエリアを広げ、機能面からも虎ノ門の魅力を高められる計画にしていきたい」
--市場の課題をどう乗り越えるか
「工事費の高騰や人手不足で、工事の竣工時期が見通しづらい状況になっている。特に、総延べ床面積が100万㎡を超える六本木五丁目西地区は、慎重に対応しながら進めなければならない。早い段階から施工体制を固めるために、特定業務代行制度を活用した公募の予告を出した。合わせて、地下の深さなども見直し、工事の効率化と確実な施工につなげたい」
--タウンマネジメントの戦略は
「まちを構成するさまざまな人と一緒になって価値を高めていくことが大切だ。テナントと一緒に新たな企画を立ち上げる試みや、屋上庭園での収穫体験などのイベントを通して、まちと人とのつながりを生み出していく。虎ノ門、麻布台、六本木をつなぐ『戦略エリア』で長い時間をかけて集積してきたヒルズ同士の相乗効果もさらに引き出していきたい」
--人材育成の方針は
「都市づくりの仕事に実際に取り組むことが一番大切だ。虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズが完成し、社員にとっても新たなステージへと変わってきた。新たな開発だけでなく、今あるまちや建物などをさらに良くしていく運営管理も含めて、若い人材にも責任を持って現場を任せることが大事になってくる」
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(こうご・やすひろ)1991年3月慶大経済学部卒後、同年4月森ビル入社。2011年11月タウンマネジメント事業部長、15年4月都市開発本部計画統括部事業計画部長、19年6月執行役員経営企画部長兼秘書室部長兼都市開発本部計画企画部事業計画担当、25年6月取締役兼常務執行役員都市開発事業部計画企画部統括部長兼開発部統括部長兼海外事業部担当などを経て、26年6月から現職。東京都出身。68年4月25日生まれ、58歳。
◆記者の目
好きなまちを問うと、「やっぱり東京が好き」と、生まれ育った下町・上野への愛着を語る。世界の都市間競争で東京を勝たせたいという思いは人一倍強いようだ。話の端々で、入社以来、長い時間を共にしてきた●(辻のしんにょうの点が一つ)前社長の言葉や教えを引き合いに出し、脈々と受け継がれてきた同社の遺伝子を確実に自分のものにしていることがうかがえる。次世代を担う人材に、今後の事業を通じて「森ビルらしさ」を浸透させられるか注目したい。
